経営の5W1Hとは|売れない原因を一つに絞ると商売全体を見失う

基本編
商品を改良し、説明を増やし、発信まで続けているのに、売れ方が変わらない。そんな時、原因を商品や集客の一つに絞るほど、商売全体で起きているズレは見えにくくなる。経営の5W1Hは、何を、誰に、どこで、どう売るかだけでなく、いつ必要とされ、なぜ買われるのかまで含めて考える入口になる。
▶ 【基本編(氣の経営)】
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経営の5W1Hは、商品や集客を個別に直す型ではなく、何を誰にどう売るか、いつ必要とされ、なぜ買われるかの関係を見るための考え方である。売上だけでなく、顧客との噛み合わせや、売ったあとに利益・時間・気力がどう残るかまで含めて判断する。

売れない原因を一つだけ探す罠

商品を変え、発信を増やしても反応が変わらないなら、問題は一項目ではなく、商売を成り立たせる六つの関係にある。

商品を直し、発信を増やしても反応が変わらない時、原因を一つに決めるほど商売全体の関係は見えにくくなる。売れない理由は、商品や集客だけにあるとは限らない。何と何が合っていないのかを見ないまま施策を足すと、仕事だけが増え、判断材料まで散らばっていく。

売上が落ちると、最初に疑うのは商品である。内容が弱いのではないか。価格が高いのではないか。説明が足りないのではないか。
商品に大きな問題が見当たらなければ、次は集客を見る。SNSの投稿を増やし、ブログを書き、広告を出し、紹介を頼む。小さな会社では、こうして一つずつ原因を探すことが多い。
原因を絞ろうとするのは間違いではない。限られた人手と時間で商売をしていれば、手を入れる場所を決めなければ動けないからだ。
過去に商品の改良で売上が伸びた経験があれば、今回も商品を直そうと考える。発信を増やして問い合わせが増えた経験があれば、今度も発信量を増やしたくなる。これまで役に立った判断ほど、次にも使いたくなる。
ところが、商品を良くし、説明を詳しくし、発信まで増やしたのに、反応がほとんど変わらない場合がある。ここでさらに商品を増やしたり、新しいSNSを始めたりすると、仕事は増える。
それでも、なぜ売れないのかは前より分からなくなる。施策が増えるほど原因が見えにくくなるという、商売では厄介な状態が生まれる。
たとえば、十分な経験を持つ人が、内容の濃い長時間の講座をつくったとする。教材を増やし、説明も丁寧にし、価格に見合うだけの内容を用意した。提供する側から見れば、以前より良い商品である。
それなのに申込みが増えない。顧客が求めていたのが長い講座ではなく、「自分の商売の何が問題なのか、まず知りたい」という短い入口だったなら、内容を増やしたこと自体が答えにはならない。
これは、顧客の言う通りに商品を変えればよいという話でもない。経営者には、自分が積み重ねてきた経験や技術があり、それを安易に捨てる必要はない。
ただ、商品だけで売れ方は決まらない。誰に届けるのか、どんな場面で必要になるのか、どこで知ってもらうのか、どのように伝えるのか。その条件が変われば、同じ商品でも受け取られ方は変わる。
反応が弱い時、「商品か集客のどちらが悪いのか」と二択にすると、その間にある関係が消えてしまう。良い商品でも、その価値を必要としている人へ届いていなければ売れない。
必要としている人へ届いていても、買う理由と説明している価値がずれていれば動かない。販売場所が合っていても、購入までに必要な信頼が足りなければ決まりにくい。
一つの原因では説明できない売れ方がある。経営者が迷うのは、考える力が足りないからではない。商売そのものが、いくつもの条件が影響し合って成り立っているからだ。
商品を改良したのに売れない。発信を増やしたのに反応が弱い。そんな時、さらに何かを足す前に見えてくるものがある。
目の前の一項目より、その商品が誰とどんな関係で売られているかである。

売れない原因を一つに絞って商売全体が見えなくなる経営判断の迷い

その関係を見る時に使いやすいのが、5W1Hである。Whatは何を売るのか、Whoは誰に売るのか、Whereはどこで売るのか、Howはどうやって売るのか、Whenはいつ必要とされるのか、Whyはなぜ買われるのか。経営へ当てはめれば、商売を成り立たせている条件を六つの方向から捉えられる。
ただし、経営の5W1Hを六つの空欄へ答えを書き込む表として扱うと、かえって商売の動きが見えにくくなる。「商品はこれ」「顧客はこの人」「販売場所はここ」と一度決めても、現実の商売では、その答えがいつまでも固定されているわけではない。
顧客が変われば必要とされる商品も変わり、商品が変われば価格や伝え方まで変わる。六つの答えは互いに独立していない
たとえば、「経営相談を売る」とWhatを決めたとする。それだけでは、どんな相談を商品にするのかまでは決まらない。
開業したばかりの人なら、顧客の見つけ方や価格設定に困っているかもしれない。売上はあるのに利益が残らない経営者なら、知りたいのは仕事量や価格、経費との関係である。家族で事業をしている人なら、数字より役割分担や意思決定が問題になっている場合もある。
同じ「経営相談」でも、Whoが変わればWhatの中身まで変わる。
商品内容が変われば、Howも同じではいられない。短時間で状況を確認する相談と、何か月も関わるサービスでは、必要な説明も価格も契約の形も違う。
Whereも影響する。昔からの紹介で依頼される仕事と、検索から初めて存在を知った人へ販売する仕事では、購入前に必要とされる情報や信用の量が違ってくる。誰に売るかが変われば、売り方も変わるのである。
Whenも単なる「何月に売るか」ではない。顧客が必要性を感じる時期である。同じサービスでも、問題がまだ漠然としている時と、売上低下や人の退職などによって課題が具体化した時では、受け取られ方が違う。
そしてWhyには、その人がなぜお金を払うのかという理由がある。経営者が説明したい魅力と、顧客が買う理由が一致していなければ、情報を増やしても反応は変わりにくい。
こうして見ると、5W1HはWhatから始めてWhyまで進めば完成するものではない。Whoを考えた結果、Whatを変えることもある。Whereを考えればHowが変わり、Whenが変わればWhyの表れ方も変わる。
一つを動かせば別の条件も動く。この往復が、実際の経営には欠かせない。
長く商売をしているほど、一度決めた答えを持っている。扱う商品も、付き合う顧客も、販売方法も、何年もの経験から形になっている。それ自体は大きな強みである。
しかし、顧客や市場の条件が変わっているのに、以前の答えだけがそのまま残っていれば、努力を増やしても結果が合わなくなる。
経営の5W1Hを見る意味は、六項目に正解を書くことではない。商売を構成する条件の関係を見ることにある。その関係が分かれば、商品だけ、集客だけを切り取って原因を探していた時には見えなかったものが浮かび上がってくる。

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六つの答えは互いに影響し合う

何を売るかが変われば、誰に、どこで、どう売るかも変わる。5W1Hは六つの答えではなく、互いに動く関係を見るためにある。

何を売るかを決めても、誰に売るかが変われば商品の形は変わる。売る場所が違えば、必要な説明や信頼も変わる。5W1Hは六つの項目を順番に埋める型ではなく、一つの条件が別の条件へどう影響するかを見るために使う。商売は、六つの答えが同時に動いている。

「何を売るか」と「誰に売るか」は、経営では別々に決められるように見える。先に商品を決め、その後で顧客を探す。あるいは、狙う顧客層を決めてから商品をつくる。
実際の商売では、そのどちらか一方向だけでは収まりにくい。顧客を具体的に考えた瞬間に、最初に考えていた商品の中身まで変わるからである。
たとえば「経営相談」という商品を考える。開業したばかりの人なら、価格の決め方や顧客の見つけ方に関心が向きやすい。売上は立っているのに利益が残らない経営者なら、相談したいのは仕事量、価格、経費、利益の関係だろう。
家族で事業を続けている人なら、数字よりも役割分担や意思決定が問題になっている場合もある。同じ経営相談でも、相手が違えば必要とされる内容は同じではない。
ここで見えてくるのは、WhatとWhoの順番ではない。商品と顧客は互いの答えを変えるという関係である。先に商品を決めてもよいし、顧客から考えてもよい。
ただ、片方を具体的にした時、もう片方をそのまま固定できるとは限らない。長く扱ってきた商品ほど「これはこういうものだ」という形ができているが、その形と現在の顧客が求めているものが、今も重なっているかは別の問題である。
商品と顧客の関係が見えてくると、次に販売場所と売り方も動き始める。同じサービスでも、紹介で依頼される場合と、検索から初めて知った人へ販売する場合では、購入までに必要な説明が違う。
紹介なら、紹介者への信用が最初から一部引き継がれている。一方、初めてサイトを訪れた人には、どんな人が、何を、どの程度の価格で提供しているのかという情報がなければ判断しにくい。
だからWhereは、単なる「販売場所」では終わらない。どこで出会うかによって必要な信頼が変わる。店舗、紹介、ブログ、SNS、既存顧客からの再依頼では、顧客との距離が違う。
その距離が違えばHowも変わる。説明の長さ、相談の入口、契約までの時間、価格の伝え方まで同じにはならない。
高額な継続サービスを、初めて見た短い投稿だけで販売しようとすれば、商品の質以前に判断材料が足りないことがある。反対に、すでに長い付き合いがある顧客へ、毎回一から細かな説明を重ねれば、必要以上に販売へ時間を使うことにもなる。
売る場所と売り方は切り離せないのである。
小さな会社では、人も時間も限られている。そのため、販売方法を増やせばよいとは限らない。ブログもSNSも紹介も対面営業も、と入口を増やした結果、それぞれに違う説明や対応が必要になれば、売上とは別に仕事量が膨らむ。
どの方法が正しいかを先に決めるより、商品と顧客との関係の中で見るほうが、なぜ今の売り方になっているのかが分かりやすい。
5W1Hを経営へ使う意味は、六つの欄に答えを置くことではない。WhatとWhoを考えればWhereとHowが動き、WhereとHowを見れば、商品そのものの形まで問い直される。
一つの条件だけでは商売は決まらないという現実が、ここには表れている。

経営の5W1Hで六つの条件を結び商売の関係が動く様子を捉える気づき

同じ商品でも、必要とされる時期が変われば、顧客の受け取り方は変わる。半年前には関心を示さなかった人が、ある日突然相談に来ることもある。商品が急に良くなったわけではない。
その人の側で、仕事や生活の条件が変わり、必要性が具体的になったのである。
たとえば、資金繰りの相談なら、売上が順調な時には関心を持たれにくい。大きな支払いが続いたり、入金が遅れたりして、初めて現金の動きが問題として見えてくる。
人の問題も同じである。採用や役割分担について何度説明しても動かなかった経営者が、従業員の退職を境に真剣に考え始める場合がある。必要になる時期が商品の意味を変えるのである。
Whenは、「いつ広告を出せば売れるか」という販売側の予定だけを指すものではない。顧客が、その問題を自分の問題として認識する局面まで含んでいる。
決算、新年度、人の退職、売上の低下、取引先の変化など、経営者には決められない条件も多い。市場や制度、物価の変化によって必要性が生まれる場合もある。こちらの都合だけで時期を決められないところに、商売の難しさがある。
その時期が見えても、まだ一つ残る。Whyである。顧客は、なぜその商品にお金を払うのか。同じ商品を買う人でも、理由は一つとは限らない。
専門知識が欲しい人もいれば、判断する時間を減らしたい人もいる。失敗を避けたい、面倒な作業を任せたい、安心して人に相談したいという理由もある。顧客が買うのは説明そのものではない。その商品によって、自分の問題がどう変わるのかを見ている。
売り手と顧客の間でずれやすいのも、このWhyである。経営者は、自分が何年かけて身につけた技術なのか、どれほど手間をかけているのか、商品に何が含まれているのかを伝えたくなる。それらは価値を支える要素ではある。
ただ、顧客が知りたいことと同じとは限らない。相手が求めているのが「この仕事を早く終えたい」であるなら、工程の細かさを長く説明しても購入理由には届きにくい。
そこで反応が弱いと、「まだ説明不足なのだ」と考え、文章や資料を増やすことがある。説明量は増えたのに、問い合わせは変わらない。それは文章力だけの問題とは限らない。
売り手が説明している価値と、顧客がお金を払う理由がずれているなら、情報を増やすだけでは差が残る。
WhenとWhyまで含めると、5W1Hが単純な六項目ではないことがさらにはっきりする。必要になる時期が変われば、顧客の購入理由も変わる。購入理由が変われば、同じ商品でも伝える内容が変わる。
顧客が変われば、必要になる時期も販売場所も違ってくる。どこか一つに正解を置いて、残りを順番に決めれば終わる話ではない。
しかも、顧客や市場の変化まで経営者が自由に決められるわけではない。変えられない条件があるからこそ、以前の答えをそのまま使い続ければ合わなくなる場面も生まれる。
商品、顧客、場所、方法、時期、購入理由は、一つの変化が別の条件へ及ぶ関係にある。商売の現実では、その関係が商品説明や価格、顧客対応、使う時間という具体的な形になって表れてくる。
【卦象ミニコラム】
六つの答えが離れる時
卦象:天地否|交わらない条件
変化|一つずつ正しくても全体では噛み合わない
天地否は、上と下がそれぞれの場所にありながら、互いに交わらず働きが通いにくい局面を表す。商品、顧客、売る場所、方法が個別には妥当でも、関係が離れていれば商売は動きにくい。一つずつの答えが間違っているとは限らない。別々に成立している条件が、全体では力を渡し合えていないことがある。六つの答えを揃えるより、その間にどんな隔たりが生まれているかを見る卦として読める。

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売り手の価値と買う理由のずれ

売り手が語りたい技術やこだわりと、顧客がお金を払う理由は同じとは限らない。その差は、説明を増やしても埋まらない。

技術や経験に自信があっても、それがそのまま顧客の買う理由になるとは限らない。売り手が語りたい価値と、顧客が知りたいことの間に差があると、説明を増やしても届きにくい。その差は、商品内容や販売時間、働き方にも表れ、売れているのに負担だけが増える形にもつながる。

長く商売を続けていると、商品やサービスには、その人なりのこだわりが積み上がっていく。材料を選び、技術を磨き、説明の仕方を工夫し、失敗を重ねながら品質を上げてきた。
その経験は簡単に真似できるものではないし、商売を支える大きな価値でもある。ところが、その価値を詳しく語れば語るほど売れるとは限らない。
売り手は、そこまで積み上げてきた過程を知っている。だから、何年学んだのか、どんな技術を使っているのか、どれほど手間をかけているのかを伝えたくなる。
一方、顧客は、その過程を知らない状態で商品を見る。知りたいのは、自分の仕事や生活に何が起きるのかである。忙しい日に使えるのか。今抱えている問題に合うのか。時間を減らせるのか。失敗を避けられるのか。
売り手の価値基準と顧客の価値基準は、最初から同じ場所にあるわけではない。
これは、技術やこだわりに価値がないという話ではない。それらがあるからこそ、顧客へ届けられる価値が生まれる。
ただし、顧客がお金を払う時に見ているのは、その手間そのものとは限らない。十時間かけて作った商品だから、二時間で作った商品より必ず高く評価されるわけでもない。手間をかけた量と顧客が感じる価値には、別の物差しがある。
経営者向けの講座でも同じことが起きる。経験を惜しまず伝えようとして、内容を増やす。資料を厚くし、時間を長くし、扱うテーマを増やす。提供する側から見れば、以前より充実している。
ところが、顧客が最初に欲しいのが「自分の商売のどこに問題があるのかを知りたい」という入口なら、その豊富さが選びやすさにつながるとは限らない。三時間の講座を受けたいのではなく、今の迷いを短い時間で整理したい人もいる。
良かれと思って内容を増やした結果、何の商品なのか分かりにくくなることもある。説明項目が増えるほど、顧客は自分に必要なものがどこにあるのか探さなければならない。
売り手には「これだけ入っている」という安心があるが、買い手には「自分にはどこまで必要なのか」という迷いが生まれる。内容の多さが選びやすさになるとは限らない
だからといって、顧客の希望を聞くたびに商品を変えればよいわけでもない。それでは、経営者が持っている強みや提供できる品質まで失われる。
見る必要があるのは、迎合するか、自分のこだわりを押し通すかという二択ではない。自分が提供できるものの中で、顧客が必要としている価値とどこで重なるのか。その重なり方によって、商品の形も説明の内容も変わる。
この差は、実際の販売現場では小さく見える。説明を一文増やす。サービス時間を三十分延ばす。付属する内容を一つ加える。
ところが、それが積み重なると、商品は次第に「売り手が良いと思う形」へ寄っていく。顧客のWhyと離れたまま内容だけを増やせば、努力しているのに選ばれにくいという矛盾が生まれる。
商売では、長く続けてきた経験そのものが価値になる。しかし、経験の深さと買う理由は別にある。その二つが重なる場所が見えているかどうかで、同じ商品でも伝わり方は大きく変わってくる。

売り手のこだわりと顧客が買う理由の差を見つめる商売の違和感

商品と顧客の価値が合っていても、それだけで商売全体がうまくいっているとは言えない。注文が入り、売上も立っている。それでも、一件を売るために長い説明が必要だったり、購入後の対応に多くの時間を使ったりすれば、経営者の一日はその仕事だけで埋まっていく。
数字だけを見ていると、この違いは見えにくい。
たとえば、単価の低いサービスを一人ずつ対面で説明し、契約後も細かな連絡へ応じているとする。毎月それなりの件数が売れていれば、「この商品は売れている」と判断できる。
ところが、販売から提供まで一件ごとに何時間もかかれば、件数が増えるほど自由に使える時間は減っていく。売れていることと、無理なく続けられることは同じではない。
これは商品の価格だけで決まる話でもない。高単価でも、顧客が商品を理解するまでに何度も個別説明が必要なら、販売へ多くの時間を使う。
反対に、比較的低い価格でも、内容が分かりやすく、購入後の対応が過度に増えない商品なら、経営者の負担は違ってくる。WhatとHowは、売上という結果だけでなく、経営者の時間の使われ方にも表れる。
長く商売をしている人ほど、この形を変えにくい場合がある。今の販売方法が間違っているからではない。以前は、その方法が実際によく働いていたからだ。
紹介だけで十分に仕事が来た。電話で詳しく説明すれば契約になった。店舗へ来てもらえば商品を見てもらえた。その経験があるほど、「自分の商売はこの売り方で成り立つ」という感覚が残る。
しかし、顧客の側は同じ場所にとどまっていない。情報を探す場所が変わり、比較の仕方が変わり、必要とする説明の量も変わる。
以前は詳しい説明を歓迎していた顧客が、今は短い時間で要点を知りたいと考えることもある。紹介で十分だった商売でも、紹介者との関係が薄くなれば、初めて接する人へ伝える情報が必要になる。昔うまくいった方法が今も合うとは限らない
過去の方法を使い続けること自体が問題なのではない。現在でも機能しているなら、それを無理に変える理由はない。
ただ、結果が変わっているのに方法だけが以前と同じなら、努力を増やす前に別の条件も見えてくる。顧客が変わったのか。必要とされる時期が変わったのか。出会う場所が変わったのか。
商品と市場のどちらか一方ではなく、その関係が以前とは違っている可能性がある。
商売では、「売れた」という事実だけで安心しやすい。売上が立てば、商品も売り方も合っているように見えるからだ。
しかし、そのために使う時間が増え続けたり、以前より説明しなければ売れなくなったりしているなら、同じ売上でも中身は変わっている。売上だけでは見えない変化が、販売方法や一日の使われ方に表れている。
5W1Hのズレは、表の中に現れるものではない。説明が長くなった。顧客対応が増えた。以前の方法では反応が弱くなった。売れているのに仕事ばかり増える。
そうした日々の現実に姿を変えて現れる。商売が成立しているかを見るなら、売れたかどうかだけでなく、その売り方が経営者の時間や気力をどう使っているかも無視できなくなる。

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売れたあとに何が残るかを見る

売れる方法でも、利益も時間も残らなければ長く続けにくい。これからの経営では、売ったあとに何が残るかまで見る。

売上が立っていても、利益や時間がほとんど残らないなら、その商売は経営者の人生へ別の負担を残している。増やすか減らすかだけで判断せず、売ったあとに何が残るのかを見ると、同じ売上でも経営の意味は変わって見える。顧客のWhyと、自分が続けるWhyも同じとは限らない。

同じ売上でも、経営者の手元に残るものは同じではない。月に百万円を売っていても、一件ごとの対応に長い時間がかかり、原価や外注費も多ければ、残る利益は小さくなる。
反対に、売上額は少し低くても、提供時間が短く、利益が確保でき、休日まで仕事を持ち込まない形なら、経営者の生活はまったく違ってくる。
小さな会社では、売上が分かりやすい指標になりやすい。売上が増えれば商売は良くなったように見え、減れば問題が起きたように感じる。それ自体は当然である。売上がなければ事業は続かない。
ただ、売上という一つの数字だけでは、その商売が経営者へ何を残しているかまでは分からない。同じ売上でも残るものは違う
一件を売るために何度も打ち合わせをする。購入後も細かな質問に応じる。夜や休日にも連絡が入り、その対応が当たり前になっている。
こうした仕事でも売上は計上される。しかし、その売上をつくるために使った時間や気力は、売上表にはそのまま現れない。利益が残っていても、一日のほとんどを仕事へ渡しているなら、別の意味で負担は増えている。
5W1Hで見ると、これはHowだけの問題でも、価格だけの問題でもない。何を売るのか、誰へ売るのか、どう提供するのか、どのような関係で購入されるのかが重なって、経営者の一日の使われ方をつくっている。
商品が売れているから、その組み合わせまで合っているとは限らない。売上の裏側には時間の使われ方がある
だから、反応が弱くなった時に「もっと増やす」という判断だけが残るわけではない。商品を増やす。発信先を増やす。顧客層を広げる。販売方法を増やす。
そうすることで売上が伸びる商売もある。一方で、扱うものが増えるほど説明、管理、連絡、準備も増え、経営者が抱える仕事まで膨らむ場合がある。
ここで減らすことを正解にする必要もない。商品を一つ減らした結果、必要な顧客との接点まで失うこともあるし、新しい販売方法を加えたことで、それまで届かなかった相手へ価値が届くこともある。
増やすか減らすかだけでは判断できない。見るべきなのは、その選択によって利益と時間がどう残るかである。
長く商売をしていると、「売上を増やすために何を足すか」という発想は身につきやすい。新商品、新サービス、新しい発信、新しい顧客層。成長する時期には、それが必要だった経験もある。
だが、経営には、増やした結果として複雑になったものを抱え続ける局面もある。売上を支えているものと、ただ仕事量を増やしているものが、同じように見えてしまうこともある。
同じ百万円の売上でも、十日働いてつくる百万円と、二十日働いてつくる百万円では意味が違う。売上だけを見れば同じだが、その後に残る時間は違う。
利益率が違えば、手元に残る金額も違う。顧客対応の負担が違えば、気力の残り方も違う。売れたかどうかだけでは足りないという現実は、小さな会社ほど直接、経営者本人の生活へ表れる。
増やす判断も、減らす判断も、どちらかが正しいわけではない。何を残したいのかによって意味が変わる。
売上だけを見るのか、利益まで見るのか。仕事量まで見るのか。自分の時間まで含めるのか。その違いが、同じ商売をまったく別の形に見せる。
売上や利益だけを見ていると、続ける理由は一つに見えやすい。顧客が求めている。仕事が来る。利益も出る。
それなら続ければよいように思える。しかし、経営者がその仕事を何年も続けるとなれば、別の問いも出てくる。顧客がなぜ買うのかと、自分がなぜこの仕事を続けるのかは、同じWhyではない。
顧客が商品を買う理由は、困りごとの解決、時間の短縮、安心、失敗の回避などである。一方、経営者が仕事を続ける理由には、利益だけでなく、積み上げてきた経験を生かしたい、長く付き合ってきた顧客との関係を守りたい、自分にしかできない仕事を残したいといったものもある。
どちらも商売には必要だが、顧客のWhyと経営者のWhyは別にある
この二つが大きく離れると、売れているのに続けるほど消耗する形も生まれる。顧客には必要とされている。売上もある。
ところが、一件ごとの対応が長く、休日まで連絡が入り、経営者自身は別の仕事へ時間を使えない。顧客の側から見れば価値のある商品でも、経営者の側では、その価値を届ける方法が今の自分に合わなくなっていることがある。
反対に、利益だけを基準にして切り捨てればよいわけでもない。すぐに大きな利益にならなくても、長年の信用をつくっている仕事がある。紹介につながる仕事もある。
自分の経験や知識が蓄積され、後から別の商品や文章へ生かせる仕事もある。売上以外にも仕事から残るものはある。だから、利益が少ないという理由だけで価値がないとは決められない。
長く続けてきた仕事ほど、この判断は難しくなる。以前は無理なくできた働き方でも、今は同じ時間をかけることが負担になる場合がある。
以前は一日に何件も対面で対応できた。夜まで仕事をしても翌日に響かなかった。紹介が続く限り、新しい販売方法を考える必要もなかった。
そのやり方が間違っていたわけではない。ただ、市場も顧客も経営者自身も、同じ場所にはとどまらない。
人生後半の経営では、「まだできるか」だけでは判断しきれない場面が増える。できる仕事でも、これからもそこへ時間を使いたいのか。売れる商品でも、その売り方を何年も続けたいのか。
顧客に必要とされる仕事でも、経営者自身の生活や身体、家族との時間まで差し出す必要があるのか。続けられることと、続けたいことは違う
5W1Hも、この時間軸から見ると固定した答えではなくなる。WhatもWhoもWhereもHowも、以前と同じでよいとは限らない。
Whenは市場や顧客だけでなく、経営者自身の人生にもある。Whyも、若い頃と今とで変わってよい。仕事を増やしたい時期と、残すものを選びたい時期が同じである必要はない。
だから、今の商売を見る時に必要なのは、昔の正解へ戻すことではない。今の顧客、今の商品、今の売り方、今使っている時間、今残っている利益や気力が、どんな関係になっているかである。
今の商売が今の自分にも合っているかという問いまで入った時、5W1Hは単なる販売の型ではなくなる。
何を売るか。誰に売るか。どこで売るか。どう売るか。いつ必要とされるか。なぜ買われるか。
そして、その商売を続けたあと、自分には何が残るのか。六つの答えを一度決めて終えるのではなく、その関係を見ながら今の経営を捉える。その視点があれば、商品や集客の一つだけを直そうとしていた時には見えなかった判断材料が、少しずつ形を持ち始める。

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読者からのよくある質問とその答え

Q.経営の5W1Hとは、どのように考えればよいのでしょうか?
A.経営の5W1Hは、何を、誰に、どこで、どうやって、いつ、なぜ届けるかを分けて見ながら、互いの関係まで捉えるための考え方である。六つの項目を一度決めて終えるのではなく、一つが変わった時に他の条件も変わる前提で、商売全体の噛み合わせを今の条件で見る。

Q.商品を改善しても売れ方が変わらないのはなぜでしょうか?
A.売れない原因を一つに絞ると、商品と顧客、販売場所と方法、必要になる時期と購入理由の関係が見えにくくなる。商品だけを直しても、別の条件との噛み合わせが合っていなければ、反応が変わらない場合がある。施策を増やす前に、関係のずれまで含めて考える必要がある。

Q.売上が同じなら、商売の状態も同じと考えてよいのでしょうか?
A.売上は結果の一つだが、利益、対応時間、提供方法まで同じとは限らない。同じ売上でも、手間が多く利益や自由な時間がほとんど残らない商売もあるため、売れた金額だけでは経営の状態を判断しきれない。売ったあとに何が残るかまで含めると、意味は変わる。

Q.今の商売を続けるか変えるかは、何を基準に考えればよいのでしょうか?
A.今の商売が今の自分にも合っているかを見ることが判断の基準になる。顧客に必要とされているかだけでなく、利益、時間、気力、続ける理由まで含めると、続ける・変える・減らすという選択の意味が違って見える。過去に合った方法が、今も同じ条件で合うとは限らない。

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1|売れない原因を一つに絞らない
商品を直しても反応が変わらない時、原因が商品だけにあるとは限らない。顧客、売る場所、伝え方、必要とされる時期など、別の条件との関係にずれが表れている場合がある。
2|顧客が買う理由とのずれを見る
売り手が伝えたい技術や経験と、顧客がお金を払う理由は同じとは限らない。説明を増やしても反応が弱いなら、情報量より、提供する価値と顧客が求めている価値の関係が見えにくくなっている可能性がある。
3|売れたあとに残るものを見る
売上が立っていても、販売や対応に多くの時間を使えば、利益や自由な時間の残り方は変わる。商売の状態は売上だけでは決まらず、その仕事を続けたあと経営者に何が残っているかにも表れる。

『売れない理由を一つに決めるほど商売は見えにくくなり、商品、顧客、売り方の関係を置き去りにして売上だけを追えば、経営者に何が残るかという違いまで見失いやすくなる。』

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