物を減らすと時間が増える本当の理由
捨てれば減るのではない
胸につかえた影が去るのだ
人は手ぶらを恐れるたび
いらぬ重さを抱えこんでゆく
持てば持つほど気は散り
失う不安が夜を曇らせる
壊れるかもしれぬ明日に
心を住まわせるほど苦しくなる
減らすとは貧しくなることではない
ようやく安らげる場所へ帰ることだ
この言葉が示していることは、人生は足せば楽になるとは限らず、むしろ増やし方を間違えると悩みまで抱え込むということである。
人は何かを増やせば安心できると思いやすい。
物を増やす。
予定を増やす。
人づきあいを増やす。
情報を増やす。
けれど、増えたものには必ず管理がついてくる。
持てば守らねばならず、増やせば気にかけねばならず、抱えれば失う不安までついてくる。
つまり、増やすという行為は、喜びだけを連れてくるのではなく、手間と心配も一緒に連れてくるのである。
だからこの言葉は、欲を捨てよと言いたいのではない。
大事なのは、何を増やすかの前に、何を減らすかを見ることだと言っている。
減らすことを考えないまま増やし続けると、暮らしは重くなり、気は散り、心の置き場まで狭くなる。
反対に、いらないものを減らせば、時間が戻り、気持ちが静かになり、本当に必要なものが見えてくる。
人生を楽にする鍵は、増やす力より、減らす知恵にある。
経営は増やす前に減らすことが原則
経営とは、限られた気力と時間とお金を、どこに配り、どこを減らすかを決める営みである。
だから、増やすことばかりを考えている経営は、売上や商品や予定が増えても、同じだけ悩みや負担も増やしやすい。
たとえば、良かれと思って仕事の幅を広げすぎる。
付き合いを断れず予定が埋まる。
道具や情報を増やして安心したつもりが、今度は管理と判断に追われる。
そうなると、頭の中にいつも未処理のものが残り、休んでいても休んだ気がしなくなる。
会社の中でも同じで、商品が多すぎれば案内が複雑になり、やることが多すぎれば優先順位がぼやけ、物が多すぎれば空間まで重たくなる。
目の前にはたくさんあるのに、肝心の流れは鈍くなる。
まるで棚はいっぱいなのに、欲しい湯のみだけ見つからぬ朝のようなもので、少し笑えぬ話である。
なぜそうなるかといえば、人は増えるものの明るい面だけを見やすく、増えたあとに必要になる手入れや見張りや選別の負担を軽く見積もりがちだからである。
物には置き場所がいる。
予定には準備がいる。
人間関係には気づかいがいる。
情報には整理がいる。
つまり、何かを増やすたびに、見えない管理コストも一緒に増えていく。
しかも経営者は責任を背負う立場だから、その増えた負担が静かに判断力の消耗へ変わりやすい。
気が散る。
決めきれない。
細かなことに心が引っ張られる。
すると、本当に大事な一手より、目の前の雑務に力を奪われる。
氣の経営で大切なのは、足すことより先に、流れを鈍らせているものを見ることだ。
減らすことは敗北ではなく、流れを戻す調整である。
減らしたから弱くなるのではない。
余分を外すから、強みが前に出るのである。
だから今日やることは、大げさな断捨離大会ではない。
まずは、いまの自分と仕事の中で
「増やしたせいで重くなっているもの」
を一つ見つけることだ。
たとえば、もう役目を終えた資料の山でもいい。
反応の薄い発信の型でもいい。
気を遣うばかりの予定でもいい。
使っていない備品でも、増えすぎたメニューでもよい。
そこを一つ減らす。
やめる。
まとめる。
移す。
その小さな整理だけで、思った以上に呼吸が深くなることがある。
物を減らすと時間が増える理由は、探す時間、迷う時間、片づける時間が減るからだ。
そして経営でも同じく、減らせば余白が生まれ、余白が生まれれば気が巡り、気が巡れば人もお金も仕事も動きやすくなる。
増やす前に減らす。
この順番に戻すだけで、人生も商いも少しずつ静かに整っていく。
何でも抱え込むのが立派なのではない。
余白を守れる人ほど流れをつくれる。
経営者の強さとは、持つ力より、手放す知恵に出る。
【余分を一つ減らす10分整理】
今日のうちに10分だけ取り、仕事場の机まわりかパソコン内のどちらか一か所で、今の経営に不要なものを一つ削除する。使っていない資料を捨てる、古いファイルを消す、見返さないメモをまとめる、そのどれかでよい。増やす前に減らす感覚を、まず小さく実行すること。
人は足すことで豊かになろうとするが、実際に人生を静かに立て直すのは、増やす力ではなく減らす知恵である。余分を手放したところから、時間も気持ちも運も、ようやく素直に巡り始める。
【運を開く言葉】
書:瑞雪 文:游雲
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内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトの「運の研究-洩天機-」は、氣と運をテーマにしている。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。
瑞雪(ずいせつ)
書家。新潟県村上市に生まれる。幼い頃より書に親しみ、18歳で書家を志し、大東文化大学文学部中国文学科で青山杉雨氏に師事。卒業後 ㈱ブリヂストンに就職するも6年後に退職し、独自の創作活動を開始する。人生の法則を力強く書いたその書は、多くの人に生きる力と幸運をもたらすと評判である。雅号の瑞雪は、吉兆をもたらす雪を意味している。



















