感情的になって後悔する|怒りが人間関係に残すもの

縁と人間関係

【運を開く言葉】

書:瑞雪 文:游雲

怒りにまかせて言い返した直後は、少し胸が晴れたように感じる。それでも時間がたつと、言いすぎた言葉や相手の表情が残り、関係まで変わってしまう。感情的になって後悔するのは、怒ったことそのものより、その瞬間の感情に行動まで預けてしまったときである。

腹が立つほど
言葉は早くなる

言い終えたあとで
胸に残るのは
勝った気分ではない

相手の沈黙や
少し遠くなった距離

怒りは過ぎても
投げた言葉だけは
相手の中に残っている

「不幸は感情が引き起こす」と聞くと、怒ったり落ち込んだりすること自体が悪いように見える。だが、ここで問題になるのは感情そのものではない。
腹が立つことも、悔しいことも、傷つくこともある。感情は勝手に生まれる。
違いが出るのは、そのあとである。怒りに任せて相手へ言葉をぶつければ、その場では気が済んでも、相手との距離や信頼には別の結果が残る。
感情は一瞬でも、行動はその先の関係へ影響する。
だから「幸福は意志と努力で引き寄せる」という部分も、感情を押し殺して我慢する話ではない。
いま感じていることと、これから残したい関係や自分の生き方を分けて考え、そのうえで行動を選ぶという意味である。
感情に従うしかない状態から、自分で選べる場所へ移る。そこに、この書作品の中心がある。

感情の勢いが人との関係を壊す

感情的になって後悔する場面では、たいてい怒りそのものより、その直後の反応が問題を大きくしている。怒ったことには理由があっても、そこで口にした言葉まで正しかったとは限らない。
ここでいう感情のコントロールとは、感情を消すことではなく、感じたことと実際にすることを分けることである。
腹が立っている最中は、自分が受けた失礼や理不尽さばかりが大きく見える。相手にも分からせたい。黙っていたら負けた気がする。
そこで強い言葉を返すと、その瞬間だけは気持ちが晴れる。ところが、数時間たって怒りが薄れると、別のものが見えてくる。言いすぎた一言や、黙った相手の顔である。
怒りで人間関係を壊すのは、一度腹を立てたからではない。感情的な言葉をぶつけられる側には、「また同じことが起きるかもしれない」という警戒が残る。
何度か続けば、必要なことしか話さなくなる。誘わなくなる。相談しなくなる。表立った喧嘩がなくても、関係は少しずつ変わっていく。
本人から見ると、相手が急によそよそしくなったように感じることもある。だが、相手から見れば突然ではない。その前に何度も、距離を置く理由が積み重なっていた
感情の爆発は数分で終わっても、そのとき相手が受け取ったものまで一緒に消えるわけではない。
ここには見落としやすいずれがある。怒っている最中は「自分が正しいか」が最大の問題になる。人間関係では、それだけでは終わらない。
正しいことを言ったとしても、相手を傷つける言い方を重ねれば、信頼は減っていく。正しさと、その関係をどう扱うかは別の問題である。
もちろん、腹が立っているのに笑って耐え続ければいいという話でもない。嫌だったことは嫌だったと言えばいい。断る必要があるなら断ればいい。
ただ、自分の感情を伝えることと、感情の勢いで相手を攻撃することまで同じにする必要はない。
仕事でも同じことが起きる。顧客や取引先、仕事仲間との間では、一度の言い争いに勝ったことより、「この人とは話ができる」という信頼のほうが長く残る
感情的な反応でその信用を削れば、その場では見えなくても、あとから仕事の関係に表れる。
幸福を考えるとき、目の前の怒りに勝ったか負けたかだけを見ても仕方がない。見るべきなのは、その反応のあとに何が残ったかである。
感情は勝手に湧いてくる。それでも、その感情に自分の行動まで明け渡す必要はない。そこで選び直せることが、自分の人生を自分で扱うということである。
【卦象ミニコラム】
怒りを攻撃に変えない
卦象:沢天夬|決めても攻めない
変化|感情の勢いから判断へ移る局面
沢天夬は、曖昧なまま抱え込まず、はっきり決する局面を表す。一方で、強さをそのまま争いへ向けることは戒められている。 怒りを感じたときも、黙って耐える必要はない。嫌なことは嫌だと伝え、断るべきことは断ってよい。ただし、相手を傷つけなければ意思を示せないわけではない。感情が高まったときほど、「何を伝えたいのか」と「どう攻撃したいのか」が混ざっていないかを見る局面である。

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【よくある疑問】
Q.怒りを感じたときは、我慢して何も言わないほうがいいのですか?
A.我慢して黙る必要はない。怒りを感じることと、その勢いで相手を傷つけることは別である。嫌だったことや断りたいことは伝えてよい。ただし、感情をぶつけることと意思を伝えることを同じにしないほうが、関係も自分の判断も守りやすい。

【開運への手がかり】
怒りの奥で守りたいものを見る
腹が立ったとき、その場で勝つことと、その人との関係を守ることが同じ方向を向いているとは限らない。いま出そうとしている言葉が、自分の本当に守りたいものを守る言葉になっているかを見る。

(内田 游雲)

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