人はなぜ、あれほど過ぎ去ったことを気にするのだろう。
「あの時ああしておけば・・・」
と夜な夜な回想してみても、時計は一秒たりとも巻き戻らない。
逆に未来のことを考え出すと、まだ見ぬ不安が雪だるまのように膨らみ、気持ちはずっしり重くなる。
しかし、冷静になればだれでもわかる。
現実として存在するのは、今この瞬間だけだ。
過去はアルバムの写真のように、ページをめくればそこにあるが、動きはしない。
未来は白紙のスケジュール帳。
書き込みも、落書きも、まだ自由自在だ。
経営も人生も、結局は
「今の一手」
の積み重ねでできている。
過去の失敗を反芻しても売上は増えないし、未来のリスクを心配しても現金残高は一円も増えない。
悩んでいるその時間で、ほんの少しでも前に進む行動をした方が、ずっと建設的だ。
例えば、嫌な出来事を思い出したら
「今の私はその時より成長している」
と笑い飛ばす。
未来が心配になったら
「その時の自分が最善を尽くすから大丈夫」
と自分を信じる。
これだけで、心はぐっと軽くなる。
未来の不安を手放すのは、特別な訓練ではない。
ほんの少し、視点を
「今」
に戻すだけでいい。
もちろん、備えや反省は必要だ。
でもそれは、未来を恐れるためではなく、安心して今日を楽しむためにやるものだ。
過去の経験は参考資料、未来の予測は企画書。
それ以上でも以下でもない。
資料や企画書をずっと眺めていても、商品は売れないし、仕事は片づかない。
だからこそ、今この瞬間に集中する習慣を持ちたい。
一日の中で
「今日は何をひとつ良くできるか？」
を考えるだけで、気持ちは前に進む。
たとえそれが机の上を片づけることでもいい。
小さな前進が積み重なれば、未来は自然と開けてくる。
結局、過去に囚われない思考法も、未来を明るくする方法も同じだ。
「今」
を軽やかに生きること。
過ぎ去ったことは置いていき、つまらぬ取り越し苦労はカバンから出して捨ててしまおう。
その分、今日の景色も会話も、きっと鮮やかに見えてくる。
【運を開く言葉 】
書：瑞雪 文：游雲
