人生は落ちるのは一瞬でも這い上がるには長い時間がかかる

心の整え方

【運を開く言葉】

書:瑞雪 文:游雲

大きな問題が起きると、人は失ったものを早く取り戻したくなる。昨日まであった場所へ、一日でも早く戻りたい。その気持ちが強いほど、一気に状況を変える方法を探し始める。だが、人生は崩れたときと同じ速さでは元に戻らない。ここで焦るほど、目の前の判断まで急ぎ始める。

落ちた場所から見上げると
昨日が遠くに見える

急いで戻ろうとしても
足だけが空回りする

下り坂には勢いがあり
登り坂には足音しかない

同じ道なのに
同じ速さでは戻れない

それでも今日の一歩は
昨日より少し高い場所に
自分を運んでいこう

人生は、崩れるときと立て直すときで時間の流れ方が違う。何かを失うのは一瞬でも、その後に失ったものを取り戻し、生活や気持ちを立て直すには長い時間がかかる。苦しいのは、落ちたことだけではない。昨日までいた場所が見えているから、早くそこへ戻りたくなることだ。
けれど、落ちた速さを基準にすれば、今日の一歩はあまりにも遅く見える。進んでいても、止まっているように感じてしまう。この言葉が示しているのは、再生には再生の時間があるという現実である。崩れた時間と、積み直す時間は同じではない。
失ったものが大きいほど、元の場所までの距離も長く感じる。それでも、昨日より少し高い場所へ進んでいるなら、その一歩は消えていない。這い上がる途中で歩みが遅く見えても、それだけで失敗とは言えない。落ちた速さを、登る速さの基準にしないことである。

這い上がる道には近道などない

大きく崩れたあと、人は失った量ではなく、失った速さに引っぱられる。数か月で仕事も生活も変わったなら、数か月で元に戻したいと思う。昨日までできていたことができなくなれば、今の自分だけが遅れているようにも感じる。ここで覚えておきたいのは、人生を立て直す時間は、崩れた時間の逆再生ではないということだ。
焦りが強くなると、普通なら選ばない近道が魅力的に見えてくる。一度で取り返せる話、短期間で状況を変えられる方法、これまでの遅れを帳消しにできそうな選択である。ゆっくり積み上げている時間が惜しくなり、一発逆転のほうへ気持ちが傾く。時間に追われているときほど、この誘惑は強い。
だが、早く取り返そうとする気持ちと、実際に立て直すための判断は同じではない。焦って空回りすると、考える時間を削り、目先の結果を優先し、判断そのものが荒くなる。早く終わらせたいから急いだのに、その判断で問題が増えれば、立て直しに使う時間はさらに長くなる。なんとも皮肉な話である。
人が焦るのは、弱いからではない。失ったものが見えているからだ。以前の暮らし、以前の自分、以前できていたことが記憶に残っている。その姿と今を比べれば、今日の小さな前進など取るに足りなく見える。けれど、その比較には一つ妙なところがある。転げ落ちた速さを、そのまま登る速さの基準にしていることだ。
下り坂は、勢いがつけば自分の意思より速く進む。登るときは、自分の足で一歩ずつ進むしかない。同じ距離でも、使う力も時間もまるで違う。人生の再生も似ている。失ったものを一つずつ取り戻し、生活を組み直し、気持ちが追いつくまでには、そのための時間がある。
だから、時間がかかっているという事実だけで、立て直しが失敗しているとは決められない。昨日より少し眠れるようになった。昨日より一つ判断できた。昨日より余計なことをしなかった。大きな変化ではなくても、それは空白ではない。
焦りは、進んでいない時間を嫌う。だが再生の途中には、目に見える成果が出ない日も含まれる。一発で取り返せないからこそ、急がず判断できる状態を失わないほうがいい。落ちた速さを基準にしなければ、今日の一歩は昨日よりずっと正確に見えてくる。
人生を立て直すとき、問うものは「いつ元通りになるか」だけではない。今の判断が、本当に上へ向かう一歩になっているかである。早さより、方向を間違えない。その積み重ねが、遠く見える場所との距離を少しずつ縮めていく。
【卦象ミニコラム】
這い上がる時間を急がない
卦象:風山漸|一段ずつ進む
変化|急いで戻す意識から順序を踏む時間へ
風山漸が示すのは、急いで元の場所へ戻ることではなく、順序を飛ばさず進む局面である。漸には、物事が段階を踏んで進むという意味がある。 崩れたあとに一足飛びで取り返そうとすると、今いる場所で積み直すべきものまで飛ばしてしまう。再生の途中では、遅く見える一歩にも役割がある。速さを上げるより、いま踏んでいる足場を確かめ、その次へ進む。漸は、回復の時間を無理に縮めない見方を示している。
【開運への手がかり】
その判断は焦りから出ていないか
早く元へ戻りたいときほど、目の前の選択が「状況を良くするための判断」なのか、「遅れを一気に取り返したい気持ち」から出ているのかを見る。この二つを分けるだけで、焦りに判断を預けにくくなる。

(内田 游雲)

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