人知編

経営者の判断、言葉の温度、任せ方、境界線など「人の姿勢」を扱う。関係性は経営の空気を決め、同じ商品でも結果を変える。人生全般の人間関係は別カテゴリへ委ね、ここでは経営の現場で使える判断と整え直しを言葉にする。

USPの作り方|強みを20秒で言語化する

USPの作り方を整え、20秒で言語化して安心して選ばれる気持ちになる
強み(USP)とは才能ではなく、「なぜあなたから買うのか」を一文で示す約束だ。本記事ではUSPの作り方から20秒フレーズの言語化、値上げしても選ばれる運用法までを解説する。言葉を整え、一貫して使うことで価格競争を抜け、高単価でも利益が巡る経営へと変えていく。(内田 游雲)

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内田游雲(うちだ ゆううん)

ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。中小企業経営者に向けてのコンサルティングやコーチングを専門に行っている。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的指導には定評がある。本サイトの「運の研究-洩天機-」は、氣と運をテーマにしている。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。

この記事の思想は「氣と経営を整える実践ノート(無料メルマガ)」を元に書いている

USPとは何か
USPとは「なぜあなたから買うのか」を一文で示す約束である。

強み(USP)とは「なぜあなたから買うのか」を一文で示す約束である。
USPの作り方は、実績×相手×痛みを整理し、20秒フレーズに言語化することから始まる。
値上げしても選ばれるUSPは、一貫して運用することで高単価と利益を安定させる。
強みを整え、言葉を巡らせることで、価格競争から抜け出せる。




強み(USP)に悩む経営者の突破口

強み(USP)は才能の宝探しではなく、霧の中に一本だけ立つ灯台であり、見つけた瞬間から値段ではなく理由で選ばれ始める。

強みに悩む経営者は、差別化できない焦りで価格競争に巻き込まれる。
まず強み(USP)とは何かを整理し、強みがわからない原因を切り分け、選ばれる理由を言語化する。

迷いの正体は、強みがないことではなく「何を残して何を捨てるか」が未決なことだ。
ここでは、比較される土俵を降りるために、顧客の不満・期待・決め手を3点だけ拾い、あなたの提供価値を一本化する。
男性は成果と効率に寄りやすく、女性は信頼と体験価値に寄りやすいが、どちらも「お客の利点」に戻せば筋が通る。

強み(USP)に悩む経営者が最初につまずく場所は、だいたい同じだ。
競合を見て焦り、価格を見てため息をつき、実績を見て肩が落ちる。
ここで起きているのは「強みがない」ではない。
「比較の土俵が決まっていない」だけだ。

土俵が決まらないと、勝ち負けの判定も毎回変わる。
すると判断が揺れる。揺れると気が乱れる。
気が乱れると、言葉が濁る。
結果として、説明が長くなるか、逆に黙り込むかの二択になりやすい。

沈黙は美徳だが、商談では誤解の温床になる。
相手の頭の中で勝手に「高いのかな」「よく分からないな」が育つ。
植物なら育つと可愛いが、これは育ってほしくない。

人は不安なときほど、他人の正解を拾い集める。
だが、拾い集めた正解は、だいたい自社の言葉にならない。
なぜなら、強み(USP)はスペックの競争ではなく、「誰のどんな悩みを守るか」で決まるからだ。

ここが定まると気が落ち着く。
落ち着くと視界が広がる。
視界が広がると、比較の矢印が「競合」から「お客」に戻る。
すると、価格競争のリングから自然に降りられる。

リングに上がった瞬間から、パンチの強さより体重差が気になり始める。
経営者の肩こりも増える。
まずはリングの外に出る。
ここが第一歩になる。

USPとは何か。
ここを曖昧にしたまま話を進めると、文章も会話もブレる。
USPとは、Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)の略で、直訳すれば独自の販売提案だ。

ただし本質はもっと実務的だ。
強み(USP)とは、「なぜあなたから買うのか」を一文で示す約束だ。
違いを並べることではない。
特徴を羅列することでもない。
まして自慢話でもない。
お客が得る変化を、選ぶ理由として言語化したものになる。

形にすると分かりやすい。
強み(USP)は、誰の、どんな悩みを、どう軽くし、どんな未来を残すかで組み立てる

ここでよくある誤解が「実績がある=USP」という思い込みだ。
実績は材料だ。
材料だけでは皿にならない。
料理にしないと食べられない。
しかも材料を高く積み上げるほど、食べにくいタワーが完成する。

見た目は映えるが、顎が疲れる。
だから一文に圧縮する。
20秒で言える形にする準備が必要になる。

氣の経営の視点で言えば、USPは経営者の姿勢がにじむ言葉でもある。
どこまでお客の生活を守るのか。
何を守り、何を守らないのか。

守る範囲が決まれば、言葉は削れる。
削れると、伝わる。
伝わると、価格ではなく理由で選ばれ始める

ここで初めて、強みが「利益をもたらす」段階に入る。

ここまでで肩の力が少し抜けたなら、次は「才能探し」をやめて、強みを“決める側”に回る番だ。


強みの軸を守る相手に絞って書き出し、迷いがほどけて落ち着く

技術が高い。実績がある。丁寧に対応している。
どれも立派だ。
だが、それを並べるほどUSPが強くなるかというと、実は逆になりやすい。
理由は簡単だ。

材料が増えるほど、焦点が散る。
焦点が散るほど、相手の頭の中で「結局なにが良いの?」が起きる。
人は判断にエネルギーを使う生き物だ。
判断の負荷が上がると、選ばれにくくなる。

これは男女どちらの顧客にも共通だが、傾向としては面白い差が出る。
男性は「結論と根拠」を先に求め、女性は「安心と納得の筋」を先に求めやすい。
だからこそ、USPは一文で骨格を出し、次に補足で温度を足すのが強い。

強みは才能ではない。
強みは“繰り返し喜ばれた行為”だ。
ここを取り違えると、強み探しが一生終わらない。
宝探しの地図を、毎回描き直している状態になる。

おすすめの整理はこうだ。
最近1年で「感謝されたこと」を3つ書く。
次に「困って来た理由」を3つ書く。
最後に「あなたが当たり前にやっていたこと」を3つ書く。

これだけで材料が揃う。
すると不思議と、言葉が削れる。
削れると、気が整う。
気が整うと、余計な見栄や焦りが抜ける。
見栄が抜けると、比較の視線が外から内へ戻る。

ここで押さえるべきポイントがある。
差別化は尖ることではない。
差別化は、選ぶ側が
「これなら私に合う」
と判断できる形にすることだ。
つまり、差別化は“安心して選べる理由”に変換されたときに効く。

競合の派手な言葉が気になってもいい。
ただし、採点表を相手に渡さない。
採点表はお客に渡す。
ここまで来ると、強み(USP)は「探す」から「決める」へ変わる。

決めた瞬間、迷いが減る。
迷いが減ると、利益が増える。
なぜなら、迷っている時間はだいたい売上を生まないからだ。

強み(USP)が決まっても、売上が伸びないことがある。
理由は一つだ。
言葉が現場で使われていない。
USPは飾りではない。

USPは会話・文章・接客で繰り返されて初めて利益になる。
そして、繰り返すためには「短く言える形」に落とす必要がある。
ここで役に立つのが、20秒フレーズだ。

人間は長い説明を覚えない。
相手も覚えないし、あなた自身も毎回同じように言えない。
結果として、伝達がブレる。
ブレると、期待がズレる。
期待がズレると、不満が生まれる。
これは地味にこたえる。
靴の中の小石くらい地味だが、歩くほど痛い。

強み(USP)は、経営者の考え方を伝える言葉でもある。
だから、現場で伝えるほど「会社の芯」が揃う。
芯が揃うと、気が巡る。
気が巡ると、判断が軽くなる。
判断が軽くなると、行動が増える。
行動が増えると、数字が動く。

ここで男女別の視点をもう一度みてみよう。
男性顧客には「結果と根拠」が伝わる言い方が効きやすい。
女性顧客には「不安が減る道筋」が伝わる言い方が効きやすい。
だが両方に共通するのは、お客の利点を具体的に言えることだ。
利点が具体的なら、価格は“高さ”ではなく“意味”になる。

最後に、ひとつ見え方を変えておこう。
値下げで増えるのは、売上より説明コストだ。
問い合わせは増えるが、気が削られる。
逆に、強み(USP)を言葉にして運用すると、断る人は出る。
だがそれは損ではない。
合わない人が先に離れると、合う人が残る。
残る人が増えると、紹介が生まれる。
紹介が生まれると、価格競争から遠ざかる。

だから、強み(USP)の本当の突破口は「全員に好かれること」をやめるところにある。
多くの人に好かれたい気持ちは自然だ。
だが商売は人気投票ではない。
生活を守る約束の積み重ねだ。

霧の中で軸を立てる
卦象:山水蒙(さんすいもう)|先に問いを整える
変化|迷いを一段落させる
強み(USP)が見えない時は、探し方より「何を確かめるか」が曖昧になりやすい。山水蒙は、先に問いを整えると道が開く型になる。読みの要点は区切りだ。今日は5〜10分だけ取り、紙に「誰の困りごとを減らすか」を一行で書き、下に「その証拠は何か」を一行足す。それだけで霧が薄くなる。

「今夜5分だけ、守る相手を一人に絞って書き出し、明日その人に向けた言葉を一つ選んでみる。」

強みは探すものではなく、守る対象を決めた瞬間から輪郭が出てくる。
輪郭が見えたら、次は設計だ。言葉に落とし、誰にでも伝わる形へ整えていく番になる。

USPの作り方が決まる3ステップ

強み(USP)は思いつきの花火ではなく、火種に空気を通し、芯を整え、炎を長く保つ“炉”であり、手順に落とせば毎回ちゃんと燃える。

強み(USP)の作り方は、USPの見つけ方→強みの言語化→USPテンプレ化の3ステップで決まる。
業種別USP例も参考に、20秒フレーズとエレベーターピッチまで落とし込む。

USPはセンスではなく設計だ。
ここでは、実績の棚卸し、顧客の声の抽出、競合との違いの整理を一つの型にまとめ、言葉が毎回ぶれない状態にする。
さらに、Web・提案・会話で同じ核を使えるように、短い一文と少し長い説明文の二段構えに仕立てる。
これで「伝えたいのに言えない」を卒業できる。

USPの作り方に悩む経営者は、いきなり言葉をひねり出そうとして苦しくなる。
紙を前にして沈黙し、気だけが減っていく。

だがUSPはセンス勝負ではない。まず材料を揃える。
次に型に落とす。最後に現場で使う。
順番を守るだけで、驚くほど迷いが減る。

USPは思いつきの花火ではなく、毎日ちゃんと火がつくコンロだ。
点火ボタンを押せば燃える状態にしておけば、料理は進む。
経営も同じだ。

USP見つけ方の基本は、「実績×相手×痛み」だ。
実績とは、あなたが提供してきた価値の証拠である。
相手とは、誰に強いかという“状況”である。
痛みとは、相手が何に困って来たかという“入口”である。

ここを属性(年齢・性別)だけで決めると浅くなる。
たとえば「50代女性」ではなく「値上げしたいが怖くて止まっている人」「人を雇わずに利益を残したい人」のように、状況で捉えるほうが言葉が鋭くなる。

男性は「成果が見える状況」に敏感で、女性は「不安が減る状況」に敏感という違いはある。
だが、どちらも“状況の言語化”が進むほど納得が増える。

具体的な内容の集め方はシンプルでいい。
最近1年で「ありがとう」と言われた案件を3つ思い出す。
次に「断られた案件」を1つ思い出す。
最後に「自分は当たり前にやっていたが、相手が喜んだ行為」を3つ書く。

ここでポイントは美談にしないことだ。淡々と事実を書く。
事実は気を整える。気が整うと、余計な背伸びが消える。
背伸びが消えると、言葉が現実に戻る。

現実に戻った言葉は強い。
材料が揃うと、USPは勝手に絞られる。
だから、最初から「完璧な一文」を狙わないほうが早い。

材料が揃ったら、次は言語化だ。
ここで多くの人がやりがちな失敗は「丁寧」「高品質」「安心」など、便利な言葉で逃げることだ。
便利な言葉は、だいたい誰でも使える。
誰でも使える言葉は、誰も覚えてくれない。
だから短い一文に圧縮する。

ここで力を発揮するのが20秒フレーズだ。
強みの言語化とは、相手の頭の中の“モヤ”を、短い言葉で切り分ける作業になる。

強みの言語化は、まず骨格から入ると速い。
たとえばこの型だ。
「◯◯な人の△△を、□□で減らし、◇◇を残す」

この一文だけで、対象・痛み・方法・未来が揃う。
ここで「方法」を盛りすぎると長くなるので、方法は一言でいい。
大事なのは“残る未来”だ。

経営者はつい機能や手段を語りたくなる。
男性は特に「機能の説明」で安心させたくなるし、女性は「背景と過程の説明」で安心させたくなる。

だが、相手が本当に買うのは機能ではなく変化だ。
だから未来を言う。未来を言うと、値段が意味に変わる。

ここで覚えておくと便利なポイントがある。
USPは、言わないことが決まるほど強くなる

あれもこれも言わない。誰にでも当てはまる言葉を削る。
削ると気が巡る。気が巡ると表現が軽くなる。
軽くなると伝わる。

伝わると、相手が自分で選べる。
選べると、成約がラクになる。
言語化は才能ではなく、削る技術だ。
そして、この削る技術は手順を覚えるだけで身につく。

氣と経営を整える実践ノート|無料メルマガ
この考え方の背景と事例を、もう少し詳しく書いている

20秒フレーズができたら、それで完成ではない。
一文だけだと、相手の頭に
「で、どうして?」
が残る。

ここで必要なのがテンプレ化だ。
USPテンプレとは、短い核を崩さずに、会話・提案・Webの文章へ転写できる形に整えることだ。
つまり、いつでも同じ芯で話せるようにする“言葉の型”になる。

即興で頑張るほど、言葉はぶれる。
ぶれるほど、期待はずれる。
期待がずれると、良い仕事をしていても満足が安定しない。

ここが、地味に痛い。

良い仕事をしたのに、評価が伸びないと、気が削れる。
経営者の気が削れると、現場の気も削れる。
会社は気の連鎖で動いているので、ここは笑い事ではない。
まあ、笑っていいが、改善もしたい。

だから、まず二段構えにする。
一段目は20秒フレーズ。二段目は少し長い説明文だ。
長いと言っても、60〜90秒で十分だ。

型はこうなる。
「私たちは◯◯を提供する。理由は△△だ。だから◇◇が残る。」

このとき、理由は“こだわり”より“相手の利点”で語ると強い。
男性顧客は「根拠と再現性」に安心しやすく、女性顧客は「負担が減る道筋」に安心しやすい。
どちらにも効くのは、一文の核がぶれないことだ。

核がぶれないと、相手は迷わない。
迷わないと、比較されにくい。
比較されにくいと、単価が守れる。

そしてもう一つ大事なことがある。
USPテンプレは、言葉を上手くする道具ではなく、気を整える道具なのだ
迷いが減り、説明が短くなり、会話の温度が安定する。
温度が安定すると、商談が“戦い”から“合意”に変わる。
ここまで整えると、文章も接客も急に楽になる。
頑張らなくても回る状態が見えてくる。

業種別のUSP例を読むと、安心する人は多い。
「こう言えばいいのか」
と肩の力が抜ける。
だがこうした例の使い方を間違えると、言葉が薄くなる。

なぜなら、そのまま真似ると“あなたの姿勢”が抜け落ちるからだ。
例は盗むものではない。
鏡だ。
鏡は顔を知るために使う。

顔を借りるために使うと、だいたい違和感が出る。
違和感は、お客に必ず伝わる。
違和感が伝わると、気が乱れる。

気が乱れると、説明が長くなる。
長くなると、また迷う。
ぐるぐるコースに入る。
遊園地なら楽しいが、経営だと酔いやすい。

例の正しい使い方は簡単だ。
同業の例を3つ読む。
次に自分の20秒フレーズを横に置く。そして「違いが説明できるか」を見る。
説明できない部分が、あなたの曖昧ワードだ。
丁寧、安心、寄り添う、サポート。これらが悪いのではない。
ただ、誰にとって、何が、どう変わるのかが不明なままになる。
ここを具体的な内容に直す。

たとえば「安心」なら「連絡の頻度が決まり迷わない」「見積が固定で不安が減る」のように、体験に落とす。
体験に落とすと、言葉が生きる。
生きると、強みが利益を連れてくる。

良いUSPは、足し算より引き算で強くなる。
例を読んで「足りない言葉」を足すのではなく、余計な言葉を捨てるほど伝わる
言葉が減ると、気が巡る。気が巡ると、表情が柔らかくなる。
表情が柔らかいと、選ばれやすい。
これは経営者の男女どちらにも、地味に効く。

鏡に映るのは文章だけではない。
あなた自身も映っているのだ。

短い言葉に芯を通す
卦象:風天小畜(ふうてんしょうちく)|小さく積む
変化|言葉を毎回同じにする
言葉が定まらない人は、やる気より手順が飛んでいることが多い。風天小畜は、小さく積むほど力が出る型になる。読みの要点は順番だ。今日は10分で、20秒フレーズを一度だけ声に出し、言いにくい語を一語だけ置き換える。修正は一回で止める。小さく揃えるほど、明日も繰り返せる。



「10分だけ、20秒フレーズを声に出して一語だけ削り、明日も同じ順で言える形に整えらてみる。」

言葉が整うと、気は落ち着き、判断はスムーズになる。
けれど本当の違いは、整えた言葉をどう巡らせるかで生まれる。
ここからは、USPを“使う”段階に入る。

値上げしても選ばれるUSPの運用法

値上げは喧嘩を売る行為ではなく、旗を立てて味方を集める合図であり、運用された強み(USP)は「高い」の声を「納得」の拍手に変える。

値上げしても選ばれるUSPは、作って終わりではない。
値上げの伝え方(例文)を用意し、接客・営業・キャッチコピーで一貫して伝え、高単価サービス設計へつなげる。

選ばれ続ける会社は、価格ではなく“意思”で買われている。
ここでは、伝え方の筋道を作り、現場の会話・文章・導線を同じ方向に揃える。
値上げは強さの誇示ではなく、お客の未来に責任を持つ宣言だ。
納得が生まれれば、単価は上がり、紹介も増え、忙しさではなく利益が積み上がる。

USPを作ったのに、売上が思ったほど伸びない。
そんな時は落ち込む前に、点検箇所がある。

だいたい原因は能力ではなく運用だ。
USPは紙に書いた瞬間に効く魔法ではない。接点で繰り返されて初めて利益に変わる。

言い換えれば、USPの運用とは「言葉の一貫性を、会社の隅々まで通すこと」になる。
ホームページでは格好いいことを言い、現場では別の説明をし、見積書ではまた違う言い回しになる。
これが起きると、相手の頭の中に小さな不信が生まれる。

不信は怒りではない。静かに距離が空く。
距離が空くと、比較が始まる。
比較が始まると、価格の話になる。
価格の話になると、気が削れる。いつもの流れだ。

だから最初に決めるのは「核の一文」だ。
20秒フレーズを核にして、接点ごとに同じ意味が流れる状態を作る。
Webのキャッチコピー、SNSのプロフィール、初回相談の冒頭、提案書の1行目。
全部に同じ芯を通す。

ここで男女の視点を使うと分かりやすい。
男性顧客は「結論が早い」ほど安心しやすい。女性顧客は「筋が通っている」ほど安心しやすい。
だが、どちらも最後に求めるのは安心だ。
安心は言葉の整合性から生まれる。だから、一貫性は信頼の燃料になる。

USPの運用は、気を整える実務でもある。
説明が短くなる。迷いが減る。判断が軽くなる。
判断が軽くなると行動が増える。
行動が増えると、数字が動く。ここまでが“運用の連鎖”だ。

逆に言えば、言葉がぶれるほど、気は乱れ、行動は止まる。
止まると売上も止まる。

怖いのは、止まっているのに本人は「忙しい」と感じることだ。
忙しさは仕事量ではなく、混線の体感だ。
混線は、核の一文がないと増える。

だから、USPは運用して初めて利益になる
派手さは要らない。地味でいい。
地味は強い。経営はだいたい地味で勝つ。

値上げの話にも触れてみよう。
ここが一番、気が揺れやすい。

値上げすると嫌われるのではないか。
離れられるのではないか。
そんな想像が暴走しやすい。

だが、値上げで関係が壊れるのは「値上げ」そのものより、説明不足が原因になる。
値上げの伝え方は、気持ちの押し付けではなく筋道だ。
値上げの伝え方とは、相手が納得できる順番で情報を渡すことだ。

順番が整うと、相手の心も落ち着く。
落ち着くと、判断できる。
判断できると、関係が残る。

ここに使える型がある。
理由→お客の利点→選べる道

理由は「原材料が上がった」でもいいが、それだけだと弱い。
焦点は「守る範囲を守るため」に置く。
つまり、品質・時間・対応範囲を落とさずに提供するため、という筋にする。
そして利点は、お客の未来に落とす。

「結果が安定する」「迷いが減る」「対応が早いまま保てる」など、体験で言う。
最後に選べる道を用意する。
すべてを上げるのではなく、範囲を変えたプランを提示する。
これで関係は残りやすい。

値上げは強さの誇示ではない。
値上げは守る範囲を明確にする宣言だ。

宣言があるから、合う人が残る。
合う人が残るから、現場の気が整う。
気が整うから、サービスの質が安定する。
質が安定するから、紹介が増える。
紹介が増えるから、さらに価格競争から遠ざかる。

値上げは怖い行為ではない。
怖いのは、守る範囲が曖昧なまま消耗することだ。
だから、値上げの言葉は“戦い”ではなく“整列”に近い。
行列が整うと、店も回る。人も回る。お金も回る。

ここまで来たら、値上げは怖い話ではなく、あなたの時間と品質を守るための“言葉の運用”に変わっていく。


USPを一貫性ある言葉で運用し、納得が積み上がって信頼が増える

高単価サービス設計と聞くと、「何かを足して豪華にする」イメージが出やすい。
だが実際は逆だ。
高単価は盛るほど崩れる。
反対に削るほど強くなる。

サービスの価値が上がるのは、提供範囲が広い時ではなく、焦点が深い時だ。
井戸は広げるより掘るほうが水が出る。

浅く広いサービスは、説明が長くなる。
説明が長くなると、相手は疲れる。疲れると決められない。
決められないと「検討します」で流れる。

もちろん、幅広い検討は悪ではないが、だいたい冷蔵庫の奥で眠る。
冷蔵庫の奥には、賞味期限の切れた決断がいっぱいだ。
見ないふりをしたくなる。

高単価サービス設計は、対象・範囲・成果物を明確にする作業だ。
対象は「誰でも」から降りる。
範囲は「何でも」から降りる。
成果物は「頑張ります」から降りる。
これだけで言葉が締まる。

男性顧客は成果物の明確さで安心しやすく、女性顧客は範囲とプロセスの明確さで安心しやすい。
だから両方を用意する。
たとえば成果物は「月次レポート」「改善計画」「実装チェック」など形で示し、範囲は「ここまで」「ここからは別」まで示す。
ここができると、値段の説明がラクになる。
値段は“高さ”ではなく“範囲と責任”になるからだ。

高単価は、お客を選ぶ行為ではない。
あなたの時間と気を守る行為だ。

高単価は気が巡る器でもある。
無理な詰め込みが減り、余裕が生まれ、品質が安定する。
品質が安定すると、口コミが安定する。
口コミが安定すると、集客も安定する。

安定は派手ではないが、経営者の睡眠にはめちゃくちゃ優しい。
睡眠が増えると判断も冴える。
ここまでが“設計の利益”だ。

運用の最後は「仕組み」に落とす。
気合いで続けると、どこかで切れる。

人間はロボットではない。
特に経営者は、決断疲れが溜まりやすい。
だから、毎日と毎週の小さなルーチンにして、気を整え、気を巡らせる。
USPの浸透とは、社員に唱和させることではない。

現場の言葉が揃い、判断が揃い、お客の期待が揃う状態を作ることだ。
USPの浸透は、会社の空気を整える仕事になる。

まず毎日。
朝に20秒フレーズを一回読む。
昼に会話で一言だけ入れる。
夜に反応をメモする。
これだけで十分だ。

次に毎週。
FAQを3つ更新する。キャッチコピーを1行だけ調整する。

値上げ説明の言い回しを微修正する。
やることは少ないほうが続く。少ないほど巡る。

ここで大事なのは「お客の言葉を採集する」ことだ。
お客は宝の山だが、採掘しないとただの山だ。
メモは採掘道具になる。

そして見え方を変える。
値上げで離れる人が出ると、数字が減ったように感じる。
だが、離れる人は損失ではなく整流板だ。

合う人だけが残ると、説明が短くなる。
短くなると、疲れない。
疲れないと、笑顔が戻る。

笑顔が戻ると、紹介が増える。
紹介が増えると、また価格競争から遠ざかる。

ここまで来ると、USPは“言葉”ではなく“流れ”になる。
流れになった時、経営者の気は軽くなる。
軽くなると、また良い言葉が出る。
良い言葉が出ると、また選ばれるようになるものだ。

関係が残る値の伝え方
卦象:風火家人(ふうかかじん)|役割を揃える
変化|現場の言葉を統一する
値上げで詰まるのは、相手を説得できないことより、自分の中の説明が散っていることだ。風火家人は、内側の整いが外に伝わる型になる。読みの要点は配分だ。今日は5〜15分で、伝える内容を三つに分け、最初の一文だけ書く。理由は短く、利点を厚く、選べる道は静かに置く。これで関係が残りやすい。

「今日15分で、値上げの理由→利点→選べる道を各一文にして、次の会話で一つだけ試してみる。」

ここまで来れば、強みは概念ではなく運用の話になる。
ただ、実際に動かすと細かな迷いが出てくる。
その小さな引っかかりを、次で静かに解いていく。



読者からのよくある質問とその答え

Q. 強み(USP)がうまく言えず、毎回説明が長くなってしまいますが、どう整えればいいですか?

A. USPは一文の約束に絞ると利益が残りやすい。
言葉が散ると比較され、気が乱れて判断が重くなるからだ。
今日、選ぶ理由を20秒で言える一文にして紙に書き、名刺や見積の冒頭にも同じ言葉を置く。
鏡の前で3回言い、明日も同じ順で話す。
そうすれば息が深くなる。

Q. 値上げをするとお客さまが離れそうで怖いのですが、どう伝えればいいですか?

A. 値上げは筋道で伝えると関係が崩れにくい。
理由とお客の利点が揃うと不安がほどけ、気が落ち着いて納得が生まれるからだ。
今日、理由→利点→選べる道を各一文で用意し、先に声に出して確かめる。
迷ったら利点を先に言い、相手の表情を見て間を取る。

Q. 20秒フレーズを作っても言い慣れず、結局うまく使えないのですが、どうすれば続きますか?

A. 20秒フレーズは迷いを減らし行動を早める。
長い説明は相手も自分も疲れ、気が滞って決断が先延ばしになるからだ。
今日、誰の悩みをどう軽くし何が残るかだけで作り、朝に一度読んで口を慣らす。
商談前に小声で一回唱え、言い回しを一語だけ直す。

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迷いが出たら、それは失敗ではなく整っていく途中の合図なので、次のQ&Aで引っかかりをほどいてから【強み(USP)を利益に変える行動】へ進む。

【強み(USP)を利益に変える行動】
1.守る相手を一人に決める
紙に「守る相手」を一人だけ書き、その人の困りごとを一行でメモする。
2.20秒フレーズを声に出す
作った20秒フレーズを鏡の前で3回だけ読み、言いにくい一語を消す。
3.値上げの順番を一枚に書く
メモに「理由→利点→選べる道」を一文ずつ書き、次の会話で最初の一文だけ使う。

【要点まとめ】
・USPは「なぜあなたから買うか」の約束で、言葉が決まると迷いが減る。
・作り方は実績×相手×痛みを揃え、20秒フレーズに削って整える。
・運用は一貫性が命で、値上げも筋道で伝えると選ばれ続けやすい。

強み(USP)は才能の宝石ではなく、経営者が守る相手を決めた瞬間に灯る光だ。その光を20秒の言葉にして毎日同じ方向へ向ければ、値上げさえも押し出しではなく合図になる。風向きに振り回されず、自分の旗を立てて歩くとき、選ばれる理由は静かに積み上がり、利益は自然に巡り始める。

(内田 游雲)

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