経営者は仕事を三つに絞れ|利益が残る経営
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やることが多すぎて重要な判断が後回しになるのは、経営者の能力や根性の問題ではなく、利益を生む仕事と日々の作業が混ざっているからだ。この記事では、経営者の本来の役目は何か、なぜ仕事を三つに絞ると流れが変わるのか、その考え方と進め方を順に示す。今日はまず、抱えている仕事を全部書き出し、やめるものを一つ決め、残す三つを選ぶことから始める。
経営者の仕事は多いほど危うい
予定表が黒く埋まるほど安心しても、利益の畑まで実るとは限らない。経営者の忙しさは勲章ではなく、大事な判断を見えにくくする霧になる。
ここでは、なぜ経営者ほど「やることが多すぎて大事なことが進まない」と感じやすいのかを明らかにする。忙しさそのものが問題なのではなく、利益を生む仕事と、ただ時間を奪う仕事が混ざっていることが苦しさの正体であるとわかる。まずは、忙しさへの思い込みを外すことからである。
思うように、やりたいことができない。やらなければいけないことが多くて、重要なことができていない。経営をしていると、そんな日が続く。
しかも、小さな会社や個人事業では、そもそも「人」「モノ」「金」が足りない。だから結局、経営者が自分で全部やる流れになりやすい。
連絡もする、判断もする、現場も見る、細かい確認もする。丁寧な人ほど細部まで引き受け、責任感の強い人ほど後回しにできず、気づけば一日が終わっている。
ここで見直したいのは、忙しさの量ではない。経営者の忙しさとは、仕事が多いことではなく、利益を生む仕事とそうでない仕事が混ざって見えにくくなっている状態である。
この状態に入ると、目の前の用事には反応できても、会社の先を決める仕事には手が届かない。だから、ずっと働いているのに前へ進んだ感じが薄くなる。
重要なことができていないという感覚が消えないのは、そのためである。
しかも厄介なのは、忙しい状態そのものが努力に見えることだ。朝から晩まで動いていれば、何かを成し遂げているように感じる。人から見ても頑張っているように映る。
けれど、経営者に必要なのは、全部を抱えることではない。売上や利益につながる判断に力を使うことである。そこが混ざると、作業は増えるのに、会社は軽くならない。
「気持ちばかりは焦るけど、結局、何も進んでいない」という感覚には、きちんと理由がある。能力がないからではない。怠けているからでもない。
経営者の仕事と作業が混ざっているだけである。ここが見えてくると、自分を責める必要はなくなる。必要なのは根性ではなく、仕事の並べ方を変えることである。
人は、ただ忙しくすることで満足してしまいやすい。スケジュールが埋まると安心し、仕事に追われていると、自分はちゃんとやっていると感じやすい。経営者でも、それは同じである。
むしろ責任が大きいぶん、その感覚は強くなりやすい。何もかも手をつけていないと、不安になる。少し余白があるだけで、さぼっているような気持ちになる。
けれど、その感覚に引っぱられるほど、大事な仕事は後ろへ下がる。
本当の目的は、予定を埋めることではない。経営の目的は利益を出すことである。ここを外すと、働いているのに報われない状態が続く。
忙しくしようが、ぶらぶらしていようが、利益が出ていれば経営としては筋が通っている。極端に聞こえるが、遊んでいても利益が出ればそれでいいのである。
大事なのは、動いた量ではなく、結果につながる場所に力を使えているかどうかだ。
だからこそ、忙しさを美徳にしないことが要る。朝から晩まで動いた日より、ひとつの判断で流れが変わった日のほうが、経営者としては価値が高い。
細かい用事を十個こなすより、利益に直結する問いをひとつ深く考えた日のほうが、会社に残るものは大きい。ここを受け入れると、忙しさは勲章ではないとわかってくる。
経営者が見るべきなのは、いま何件こなしたかではない。何が利益を生み、何がただ時間を減らしているのかである。そこで初めて、仕事の景色が変わる。
多くやる人が強いのではない。利益につながる仕事を見分ける人が強いのである。ここに気づくと、焦って走り回る毎日から少し離れられる。忙しさを増やすことではなく、忙しさの中身を見ることだ。
経営者の仕事とは考えること
社長が現場の歯車になり続けると、会社という船は進んでいても行き先を失う。経営者の仕事とは、手を動かし続けることではなく、利益が生まれる流れを読むことである。
ここで経営者の仕事とは何かを掘り下げる。作業を抱えることが仕事なのではなく、利益が出る方向を考え、決め、会社の流れをつくることこそ本来の役目だと見えてくる。仕事を書き出し、残すものと減らすものを見分ける意味もここで腑に落ちる。
次に見たいのは、では経営者の仕事とは何か、ということである。忙しさを減らしたほうがいいと言われても、何を残し、何を手放すのかが見えていなければ、結局また同じ場所へ戻ってしまう。
だから必要なのは、気合いではなく、役割の整理である。
経営者の仕事は、手を動かす量を増やすことではなく、利益が出る方向を考え、決め、流れをつくることである。ここが腹に落ちると、仕事の選び方が変わる。
いま目の前にある用事が、自分でやるべきものなのか、それとも誰かに任せるか、やめるか、あとに回してよいものなのかが見えてくる。
そのために、まず一度、今やっている仕事をすべて書き出してみるとよい。細かいものまで含めると、経営者はたいてい一日に平均50以上もの仕事をしている。
返信する、確認する、頼まれごとに応じる、段取りを組み直す、細かい修正をする。ひとつずつは小さく見えても、数が重なると、肝心の思考が削られていく。
だから、書き出すだけでも効果がある。自分がどれほど多くのことに気を配り、同時にどれほど散っているかが見えるからである。
そのうえで必要になるのが、分類して、重要なものだけを抜き出すことである。全部を同じ重さで持たない。本当に利益につながる仕事、方向を決める仕事、経営者本人でないと難しい仕事だけを残していく。
ここで大事なのは、完璧に切り分けようとしすぎないことだ。まずは粗くてもいいから、仕事の性質を見分けていく。
そうすると、今まで「どれも必要」に見えていたものの中に、急ぐようで急がなくていいものや、自分が握らなくていいものがかなり混ざっているとわかる。
経営者は、真面目であるほど全部を自分の仕事にしやすい。面倒を見ようとする人ほど、細かいことにまで責任を感じやすい。
けれど、それでは会社の流れを決める仕事が後ろへ下がる。だから、仕事を減らすことは甘えではない。経営者の役割に仕事を戻すことである。
ここが見えてくると、三つだけに絞るという考え方も、少し現実味を帯びてくる。
それでも多くの経営者は、ここでこう思うはずである。「え~、三つだけなんて、できっこない」。けれど、その感覚のかなりの部分は、思い込みである。いままでずっと抱えてきたから、自分が持たないと回らない気がしているだけのことも多い。
実際には、強引に削ってみれば、それはそれでちゃんと仕事は回っていくものだ。
もちろん、最初は不安になる。抜けが出るのではないか、相手に迷惑をかけるのではないか、売上が落ちるのではないか。そう考えるのは自然である。
だが、その不安の多くは、仕事を減らすことへの不安ではなく、自分が握っていない状態への不安である。ここを取り違えると、必要のない仕事まで抱え続けてしまう。
人間だもの、できないことはできない(笑)。このひと言は、少し肩の力を抜いてくれる。全部きちんとやろうとしても、時間には限りがある。体力にも集中力にも限りがある。
だからこそ、物事をなるべく単純にして、作業を減らせるだけ減らすことが大切になる。減らした先に空いた時間を、ぼんやり過ごすためではなく、考える時間に回していく。ここに、この方法の本当の意味がある。
三つしか仕事をしないと、時間が余ってしまうと思うかもしれない。だが、その時間こそが、経営者の仕事の中心である。何を伸ばすか、何をやめるか、どこで利益を出すか、誰に何を届けるか。
そうしたことを考え、考え抜くことこそが、経営者の本当の仕事なのだ。社員の仕事と経営者の仕事は、似ているようでまったく別である。現場を支えることと、会社の行き先を決めることは、同じではない。
ここで景色が変わる。手を動かしている時間が長いほど経営しているのではない。考える時間の深さが、経営の質を決めるのである。
だから、仕事を三つに絞るのは、働かなくなるためではない。ようやく経営者としての仕事を始めるためである。ここが腹に落ちると、減らすことへの怖さより、抱え込み続けることの損失のほうがはっきり見えてくる。
手を広げすぎた日の戻し方
卦象:山天大畜(さんてんたいちく)|増やさず蓄える
変化|先に止めて配分を決める
いまは、努力が足りない局面ではなく、力の置き場が散っている局面である。ここで起きやすいズレは、不安を埋めるように用事を増やし、動いている安心で大事な判断を後ろへ送ることだ。山天大畜は、勢いのまま進むより、まず蓄える時を映す。「大畜、利貞」は、抱え込むことではなく、残すものを選んで力を守るという響きでもある。経営者ほど、全部を持つより、いま残す三つを見極めたほうが流れは変わる。今日は足すより減らし、急ぐより順序を戻す向きで進めるとよい。
経営者の仕事を三つに絞る方法
仕事を減らすのは後退ではない。枝を切った木に光が入るように、やることを三つに絞った瞬間、経営者の時間はようやく利益を生む場所へ向かい始める。
この章では、経営者の仕事を三つに絞る具体的な進め方を示す。何をやるかより、何をやめるか、任せるか、あとに回すかを決めることで、一日の景色は大きく変わる。仕事を減らすほど思考の余白が生まれ、ようやく経営者としての仕事が回り始めることがわかる。
ここまで来たら、あとは実際に形にするだけである。考え方がわかっても、日々の流れが変わらなければ、またすぐ元へ戻る。
経営者の仕事を減らすとは、利益を生まない動きを減らし、経営者にしかできない判断へ時間を戻すことである。ここを軸にして、一日の組み方そのものを変えていく。
まずやることは単純で、今やっている仕事を全部書き出すことである。細かいものまで含めれば、経営者はたいてい一日に平均50以上もの仕事をしている。
メールの返信、確認、修正、段取り、相談、雑務、現場対応、急な頼まれごと。書き出してみると、よくこんなに抱えていたものだと少し笑ってしまうくらい、たくさん出てくるはずである。
けれど、ここで遠慮はいらない。まずは全部、出す。頭の中だけで整理しようとすると、どれも大事に見えてしまうからである。
次に、その仕事を分ける。今すぐ自分がやる仕事、やめる仕事、後回しにする仕事、他人に任せる仕事。この四つくらいで十分である。
ここで大事なのは、何をするかより何をしないかをはっきり決めることだ。本当に、その仕事は必要なのか。不要な仕事をやってはいないか。この問いを避けないだけで、かなり景色が変わる。
ずっと続けてきたから必要だと思っていた仕事が、実は惰性で残っていただけということも多い。
そのうえで、重要なものだけを抜き出し、一日にやる仕事を三つだけに絞る。仕事を三つにするというのは、きれいごとではない。
利益につながるか、経営者本人でないと難しいか、会社の流れを左右するか。この三つの基準で見れば、残すべき仕事は案外少ない。反対に、やらなくていい仕事、今日でなくていい仕事、自分で抱えなくていい仕事は、思った以上に多い。
一見すると、仕事を減らしすぎるようで不安になるかもしれない。だが、仕事を三つに絞るとは、仕事を捨てることではない。力を入れる場所を決めることである。
枝が伸び放題の木は、葉ばかり茂って実がつきにくい。少し切ると、ようやく光が入る。経営もそれとよく似ている。やることが多すぎると、頑張っているのに実りが見えにくくなる。
だから、今日やる三つを決める。この小さな整理が、経営者の一日をかなり変える。
そして、ここで忘れたくないのは、三つに絞るのは効率化のためだけではないということである。経営者として思考する時間をつくるためである。
作業で一日を埋めてしまうと、会社の方向を考える時間がなくなる。すると、目の前のことには反応できても、先の利益をつくる準備が進まない。
今日やることを三つに決めるのは、余白をつくるためであり、その余白で明日の流れを読むためである。
では、実際に一日がどう変わるのか。ここが見えると、この方法はぐっと使いやすくなる。たとえば朝、書き出した仕事の中から三つだけを選ぶ。
ひとつは利益に直結する仕事。ひとつは会社の方向を決める仕事。もうひとつは、今後の負担を減らすための仕事。これくらいの配分でよい。
そうすると、目の前の細かい用事に引っぱられにくくなる。何か頼まれごとが来ても、「それは今日の三つに入るか」と見られるようになる。ここが大きい。
もちろん、急ぎのことが入る日もある。想定外は、経営にはつきものである。ただ、それでも軸があるだけで違う。三つが決まっていれば、全部に振り回されずにすむ。
今日はこれをやると決めているから、ほかはあとに回す、任せる、断る。この判断がしやすくなる。今までは「全部やらなければ」と思っていた人ほど、この変化は大きい。
責任感が強い人にも、細やかな気配りで抱え込みやすい人にも、この方法は効く。全部を拾うのではなく、大事なものを落とさないためのやり方だからである。
ここで多くの人が少し驚くのは、仕事を減らしたほうが、ひとつひとつの質が上がることである。一見、仕事をしなくなる気がして怖くなるものだが、これをやると一つ一つの仕事の質を高めることができ、かえって、うまくいくようになるものだ。
数をこなしていたときには浅く終わっていたことが、三つに絞ると深くできる。売上につながる提案も、相手への言葉も、次の一手も、少し冴えてくる。忙しさが減るからではない。判断の濁りが減るからである。
そして、三つしか仕事をしないと時間が余ってしまうと思うかもしれないが、その時間は思考する時間に当てていけばいい。ここがいちばん大事である。経営者の仕事とは、作業することではなく、本来は思考することなのだ。
考えて、考え抜くことこそが、経営者の本当の仕事だ。社員の仕事と経営者の仕事はまったく別のものだ。ただ無闇に走り回っていたのでは、大事な仕事ができなくなる。これでは、利益など出るはずもない。
だから、仕事を減らすことを怖がりすぎなくてよい。減らすとは、働かなくなることではない。利益が出る場所へ、自分を置き直すことである。
忙しく動き回ることが経営ではない。利益をどうやって出していくのかを考えることが経営である。ここを履き違えなくなると、一日の景色が変わる。たくさんやった日より、三つをきちんとやった日のほうが、会社は前へ進む。
少し拍子抜けするほどだが、経営は案外そういうものである。
最後に残したいのは、この感覚である。仕事を減らすとは、経営者としての仕事を始めることだ。全部を抱えて苦しくなるより、三つに絞って深く考える。そのほうが、会社にも、自分にも、ずっといい流れが生まれる。
読者からのよくある質問とその答え
Q. 経営者の仕事を三つに絞ると、売上は下がりませんか。
A. 減らしても売上は下がるとは限らない。仕事を広げすぎるほど判断が鈍り、利益につながる力が薄くなるからだ。経営者の仕事は数をこなすことではない。まずは一週間だけ三つに絞り、気持ちと数字の動きを静かに見てみるとよい。焦らず、比べず、整えて進めば十分だ。
Q. ひとり社長でも、仕事を三つに絞るやり方は使えますか。
A. ひとり社長でも十分できる。人数が少ないほど何でも抱えやすいが、全部を同じ重さで持つと頭も気持ちも散りやすいからだ。経営者の仕事を少数に決めるほど、判断はむしろ澄む。まず今日の三つだけ先に決めると、流れが少しずつ変わる。呼吸まで落ち着いてくる。
Q. やめる仕事が決められないときは、何を基準に見ればよいですか。
A. やめる仕事は感覚より基準で決めるほうがよい。迷うたび気分で握り直すと、時間も気もこぼれやすいからだ。経営者の仕事として残すのは、利益につながること、自分しか決められないこと、今日動かす意味があること。この順で見ると軸が定まりやすい。心もぶれにくい。
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【仕事を三つに絞る今日の実践】
1.今日の三つを先に決める
紙かメモに、今日やる仕事を三つだけ書く。売上につながること、自分が決めること、先の負担を減らすことを一つずつ入れる。
2.抱えたままの用件を一つ返す
返事を先送りしている案件を一つ選び、自分でやる・任せる・断るのどれかで返す。曖昧なまま持ち続ける用件を減らすと、頭の重さがかなり変わる。
3.予定表から一つ外す
今日の予定か定例作業の中から、なくしても困らないものを一つ消す。空いたところに新しい用事を入れず、考えるための余白として残す。
経営者の力は、あれもこれも抱えて消耗する時ではなく、本当に必要な仕事を見極めて数を減らし、残したわずかな仕事に深く向き合った時にこそ、静かに利益と未来を動かし始める。
(内田 游雲)
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