経営者は仕事を三つに絞れ|利益と時間が残る優先順位の決め方

人知編
経営者の仕事は、忙しく動くことではない。仕事の優先順位を見直し、利益・信用・未来の資産を生む三つに絞ることで、思考時間を取り戻す。小さな会社が人生後半に残すべきものは、作業量ではなく、経営者にしかできない判断と、使って減らぬ価値である。

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小さな会社の経営者が忙しいのに利益や将来の仕事が進まないのは、細かな作業へ時間と気力が分散しているためである。仕事をすべて書き出し、利益・信用・資産を残す三つへ優先順位を絞れば、思考時間を確保し、人生後半を支える経営へ無理なく変えられる。

忙しさは経営者の仕事ではない

予定が埋まるほど経営は進んでいるように見える。だが、作業の波に飲まれた経営者は、利益を生む航路と仕事の優先順位を考える時間から、少しずつ遠ざかっていく。

予定は埋まっているのに、利益を生む判断や会社の未来を考える時間がない。忙しさを成果と見なす前に、経営者の仕事とは何かを問い直す必要がある。この章では、作業に追われる安心感をほどき、経営者が本当に優先すべき仕事の基準をここで明らかにしていく。

朝、机に向かった瞬間から、メール、電話、見積もり、確認、修正、請求、顧客への返事が押し寄せる。昼になっても予定は減らず、夕方には「今日もよく働いた」という疲労だけが残る。
それでも、値上げを考える時間も、商品を見直す時間も、来月の利益を考える時間も取れていない。多くの小さな会社で起きているのは、仕事が足りない問題ではなく、忙しさが成果の証明になっているという思い込みである。
経営者が忙しい状態には、独特の安心がある。予定が埋まっていれば、会社が動いているように感じられる。顧客から次々に頼られれば、自分が必要とされている実感も得られる。何もしていない時間が生まれると、怠けているような罪悪感さえ湧いてくる。
だからこそ、目の前の作業を片づける方を選び、考える仕事を後へ送ってしまう。ところが、その積み重ねによって、重要な仕事ほど後回しになっている
経営者の仕事の優先順位を考える時、まず外したいのは、動いた量がそのまま経営の成果になるという前提である。顧客への返事を何件したか、資料を何枚作ったか、何時間働いたかは、努力の記録にはなる。だが、利益が残ったか、良い顧客との関係が深まったか、商品が強くなったかとは別の話だ。
予定の多さと経営の前進は同じではない。予定表が真っ黒でも、会社の未来を決める判断が空白のままなら、経営者にしかできない仕事は進んでいない。
経営者の仕事とは、会社の向きを決める思考である。誰に何を届けるのか、どの商品を残すのか、どこで利益を生むのか、何を断るのか。
これらは、誰かの指示を受けて処理する作業ではない。経営者自身が考え、選び、責任を引き受ける仕事だ。
小さな会社や個人事業では、経営者が現場へ入る場面が多い。それ自体が悪いわけではない。問題は、反応する仕事ばかりが一日を支配する状態である。
依頼が来るたびに答え、問題が起きるたびに処理していると、会社の方向を決める時間が消える。経営者は働いているのに、経営判断だけが置き去りになる。
「経営者は一日に何を優先すべきか」と問われたら、答えは処理件数ではない。利益、顧客、商品、時間の配分を考える仕事である。考える時間を失えば利益の道筋も見えにくくなる
忙しさを責める必要はない。これまで会社を守るために、自分が動くしかなかった時期もあったはずだ。その経験まで否定する必要はない。今、問い直したいのは、その働き方がこれからの経営にも合っているかどうかである。まずは、忙しい状態そのものを成果だと思わないところから始まる。
経営者の仕事を三つに絞り進む方向が見えて安心する場面
経営者が現場の作業を行うのは珍しくない。少人数の会社では、営業も制作も接客も経理も、自分で担わなければならない日がある。長く続けてきた仕事ほど手際もよく、誰かへ説明するより自分で済ませた方が早い。
そうして目の前の仕事を片づけているうちに、経営者は社内で最も忙しい作業担当者になっていく。
作業には大切な役割がある。約:::writing{variant=”document” id=”63942″}
束した商品を届け、請求を行い、顧客へ返事をするから商売は続く。だが、作業をこなす力と経営を決める力は別である
決められた仕事を正確に進める役割と、何を続け、何を減らし、どこへ資金と時間を配るかを決める役割は同じではない。経営者が作業だけで一日を終えると、会社の方向を決める人がいなくなる。
考える仕事は、外から成果が見えにくい。机に座って数字を見る。顧客の変化を思い返す。商品を続ける理由を問い直す。何を断るべきか迷う。
手は止まって見えても、そこで行う判断が半年後の利益を左右する。考える時間も売上を支える仕事である。その時間を「余裕ができたら取るもの」と扱えば、急ぎの作業に押され続ける。
そこで必要になるのが、一日の重要な仕事を三つに絞るという考え方だ。これは、会社の業務を三種類に減らす話ではない。その日に経営者が優先する重要な仕事を、三つまでに定めるという意味である。
顧客へ価値を届ける仕事、利益を生む判断、会社の未来へつながる仕事を先に選ぶ。それ以外は、順番を後へ送るか、別の人へ任せるか、そもそも必要かを考える対象になる。
「三つだけでは無理だ」と感じるのは自然である。電話も来る。急な修正も入る。取引先の都合もある。家族や生活の予定も無視できない。
ただ、すべてを同じ優先度で抱えれば、重要な仕事はいつも最後になる。三つを先に決めなければ重要な仕事は残らない。予定に余白ができた時だけ重要な判断をしようとしても、その余白はほとんど生まれない。
経営者の仕事を三つに絞る狙いは、仕事をしないことではない。作業に使う時間を減らし、会社の利益と方向を考える時間を確保することにある。忙しさを減らす目的は思考時間を確保することである。
今まで抱えてきた仕事を責める必要はない。会社を続けるために必要だった作業も多いはずだ。今後も自分で担う仕事は残る。それでも、すべてを自分の仕事として抱えたままでは、利益を生む判断に時間を渡せない。まず、忙しく動くことと経営することを同じにしない。それだけで、仕事の見え方は大きく変わり始める。

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仕事を増やすほど利益は残らない

仕事を抱えるほど安心するのは、穴の空いた桶へ水を注ぎ続けるのと同じである。忙しさが増えるほど、利益と判断の時間は静かに漏れ、経営者の思考時間まで奪われていく。

仕事を減らせない背景には、責任感だけでなく、売上への不安や自分で動く習慣がある。小さな会社ほど、その積み重ねが経営者の時間と利益を奪い、重要な判断を遅らせる。この章では、忙しさが続く理由を、仕事、お金、判断の構造からさらに深く丁寧に読み解く。

小さな会社や個人事業では、仕事が経営者へ集まりやすい。営業、見積もり、制作、接客、請求、入金確認、発信、取引先との調整まで、担当者を置けない業務は経営者が引き受ける。誰かが休めば代わりに入り、問題が起きれば最後に判断する。
こうして、会社に必要な仕事が経営者の予定へ集中する
一つひとつの作業は、それほど長くないように見える。メールを一本返す。書類を確認する。電話へ出る。見積書を修正する。顧客の質問へ答える。
短い作業でも、途中で別の仕事へ切り替えるたびに集中は切れる。朝から夕方まで動いていても、一つの重要な課題を深く考えられない日が増えていく。
実際に細かな作業まで書き出せば、一日に数十項目を扱っている経営者も珍しくない。以前は自分の技術や行動力で会社を前へ進められたとしても、仕事が増えれば同じ方法では限界が来る。
それでも、自分で行う習慣は仕事が増えた後も残り続ける
経営者が作業を抱える理由は、単に人へ任せるのが苦手だからではない。「自分でやった方が早い」「説明している間に終わる」「任せると品質が落ちる」と考えるのは、過去の経験から生まれた現実的な判断でもある。
実際、自分で動くことで顧客の要望に応え、信用を守ってきた時期もあったはずだ。
その成功体験が強いほど、経営者の仕事の優先順位は、会社の未来より目の前の処理へ寄りやすくなる。問題が起きる前に自分で確認し、相手から催促される前に返事をする。
責任感の強さが、経営者を最も忙しい作業担当者にしていく
仕事を減らそうと考えた時には、別の不安も生まれる。顧客に迷惑をかけないか。売上が下がらないか。信用を失わないか。これまで続けてきた仕事を止めると、自分が責任を放棄するように感じられる。
そのため、必要性が薄れた業務まで残し、新しい仕事も上へ積み重ねてしまう。
「経営者が作業を手放せない時はどうすればよいのか」という問いを考える前に、まず知っておきたい。仕事を抱える背景には責任感と恐れが同時にある
本人の能力や意志の弱さだけで説明しても、仕事は減らない。何を心配しているのか、何を守ろうとしているのかを分けなければ、手放す判断には進めない。
小さな会社では、経営者の判断、時間、気力が、そのまま事業の状態へ表れやすい。だからこそ、すべてを自分で行うことが会社を守る方法とは限らない。
経営者が抱えすぎるほど判断の質は下がりやすい。作業を減らす前に、まず仕事がなぜ自分へ集まっているのかを知る必要がある。

忙しい経営者が不要な作業を手放し本来の役割に気づく場面

仕事の量が増えれば、売上も増えるように見える。依頼を断らず、空いている時間へ予定を入れれば、請求できる金額は大きくなる。
しかし、経営の目的は受注件数を増やすことではない。経営者の生活と事業の将来を支える利益を残すことである。
売上が増えても、仕入れ、外注費、移動、修正、値引き、顧客対応が増えれば、手元に残る金額は小さくなる。さらに、経営者が使った時間まで含めれば、採算が合っていない仕事も見えてくる。
売上をつくる仕事と利益を残す仕事は同じではない
特に見落としやすいのが、仕事の前後に発生する時間である。一時間の相談でも、準備、連絡、記録、請求まで含めれば、実際には数時間を使う場合がある。納品後の修正や追加質問が続けば、利益はさらに薄くなる。
表面上の売上だけを見ていれば、経営者の仕事の優先順位を誤りやすい。
「仕事を減らすと売上も減るのではないか」という不安は当然である。実際、仕事を断れば、その分の売上は入らない。ただし、利益の薄い仕事を抱えることで、より価値の高い仕事を受けられなくなる場合もある。
低い採算の仕事が良い仕事の時間を奪っているなら、受注を増やすほど会社の力は分散する。
忙しさが続くと、経営者は目の前の入金を優先しやすくなる。価格を見直す、商品数を減らす、顧客を選ぶ、契約条件を明確にするといった判断は、急ぎではないため後へ送られる。だが、こうした判断こそ、利益の残り方を変える。
急ぎの作業が重要な経営判断を押しのける状態が続けば、経営者は働いても安心を得にくい。
作業が増えるほど、作業を減らす仕組みを考える時間も失われる。よくある質問を文章にする時間がないため、毎回同じ説明をする。商品範囲を決める時間がないため、追加依頼へ個別に応じる。顧客管理を見直せないため、連絡や確認が増える。
忙しさが次の忙しさを生む構造ができあがる。
ここで見るべきなのは、経営者が怠けているか、頑張っているかではない。時間と資金がどの仕事へ使われ、その仕事から何が残っているかである。
売上、利益、作業時間、修正回数、顧客との関係、再利用できる成果を一緒に見なければ、本当の採算は分からない。
氣の経営では、仕事、お金、時間、人との関係を別々の問題として扱わない。無理な受注が増えれば、返事に余裕がなくなり、説明が短くなり、家族との時間まで削られる。
お金の流れだけでなく、仕事の受け方が経営者の状態まで変えていく
会社が回らなくなるから仕事を減らせないと思いやすい。しかし実際には、経営者が動き続けなければ回らない形を長く残しているため、仕事を減らせなくなっている。必要なのは、さらに速く作業することではない。
経営者の時間を消費する構造そのものを見ることである。次に考えるべきなのは、その中から何を残し、何を自分の仕事から外すかである。
【卦象ミニコラム】
三つに絞る強さ
卦象:山沢損|減らして残す
変化|余分を外し大切な仕事へ力を集める
仕事を三つに絞ると、必要なものまで失うようで不安になる。山沢損が示すのは、減らすことそのものではなく、余分を外して大切なものへ力を寄せる局面である。経営者の仕事は、抱えた数で価値が決まるのではない。見るべきなのは配分だ。利益も信用も残さない作業へ時間を渡せば、重要な判断ほど遠のく。すべてを守ろうとせず、今後も育てたい仕事へ時間と気力を集める。その選別が、仕事を弱めるのではなく、残したい価値をはっきりさせる。

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利益と信用を残す仕事を三つに絞る

残すべき仕事は、利益、信用、未来の資産を生む三つである。枝を剪定した木が強く育つように、仕事を減らして優先順位を決めるほど、小さな会社の経営の幹は太くなる。

仕事の優先順位は、頭の中だけでは決められない。顧客対応、修正、請求、発信まで書き出して初めて、経営者にしかできない仕事が見えてくる。この章では、利益、信用、将来性を基準に、残す仕事と外す仕事の違いを日々の経営場面から分かりやすく具体化する。

経営者の仕事の優先順位を決めるには、まず自分が何に時間を使っているかを見える形にする必要がある。頭の中だけで振り返ると、商談や制作など目立つ仕事ばかりが浮かぶ。
実際の一日には、メールへの返事、資料の確認、請求、修正、移動、発信、問い合わせ対応など、多くの細かな作業が入り込んでいる。
朝から夕方まで予定が続いていても、会社の方向を決める仕事へ使った時間は、僅かになってしまう。忙しさを感覚だけで捉えていると、何が時間を奪い、何が利益につながっているのか分からない。
そこで必要なのが、現在の仕事を細かな作業まで書き出すことである。
書き出す目的は、仕事量の多さに驚いたり、自分を責めたりするためではない。顧客との連絡に何分使ったか、修正へ何度応じたか、同じ説明を何回繰り返したかまで見ると、時間と気力の使われ方が具体的になる。
忙しさを作業の種類と時間で捉えることで、重要な仕事を隠しているものが見え始める。
たとえば、毎日何度も問い合わせへ答えているなら、説明不足の商品案内や申込方法に原因があるかもしれない。納品後の修正が多いなら、事前確認や提供範囲が曖昧になっている可能性がある。
細かな仕事は、それ自体が問題なのではない。その仕事が何度も発生する背景まで見る必要がある。
経営者がやるべき仕事は、慣れている作業と同じではない。長く続けてきた仕事は、自分で行う方が速く、安心も得やすい。だが、作業が得意だからといって、経営者本人が今後も担い続ける必要があるとは限らない。
慣れている仕事と経営者の役割を分けることが大切になる。
会社の方向を決める。どの顧客へ価値を届けるかを選ぶ。商品と価格を決める。資金と時間の配分を決める。続ける仕事と終える仕事を判断する。
これらは、経営者本人の判断を必要とする仕事である。作業時間が短くても、会社の数年後を左右する判断は、ほかへ任せにくい。
反対に、請求書の作成、定型的な案内、繰り返しの確認、同じ形式の資料作成などは、任せる方法や回数を減らす方法を考えられる。
今すぐ手放せなくても、経営者が抱え続ける前提を疑う余地はある。
ここで問いたいのは、「自分にできるか」ではない。自分が行う意味が今も残っているかである。何でもできる経営者ほど、多くの仕事を引き受けてしまう。
だからこそ、能力ではなく役割から考えなければならない。
仕事を書き出すと、経営者にしかできない判断と、長年の習慣で続けている作業が同じ予定表に並んでいると分かる。仕事の棚卸しは時間の使い方を知る作業である
経営者の仕事を三つに絞る前に、まず何へ時間が使われているのかを正確に見る必要がある。

利益と信用を残す仕事を選び将来への手応えを感じる経営者

仕事を書き出した後は、それぞれが何を生んでいるかを見る必要がある。売上が発生しているという理由だけでは、残す仕事かどうかは決められない。経営者の時間、仕入れ、外注費、修正、値引きまで含めた時に利益が残っているかを確認する。
売上額ではなく仕事の後に残る価値を見ることが、選別の出発点になる。
利益が残る仕事でも、顧客が十分な価値を感じていなければ長くは続かない。反対に、顧客から喜ばれ、紹介も生まれているのに、価格が低すぎて経営者が疲弊している仕事もある。
良い仕事とは、顧客の満足と経営者の利益のどちらかを犠牲にするものではない。顧客価値と利益が両立する仕事を残すという基準が必要になる。
さらに見るべきなのが、信用と将来性である。丁寧な仕事が再依頼や紹介につながるなら、その成果は今月の売上だけでは終わらない。経験を記事や教材へ変えられる仕事、手順を仕組みにできる仕事、次の商品開発へ生かせる仕事も、将来の価値を持っている。
次の仕事や商品へつながるかを確かめることで、目先の金額だけでは見えない差が分かる。
一方、毎回多くの説明や修正が必要で、利益も信用も残りにくい仕事は、見直しの対象になる。長い付き合いがあるから、頼まれると断れないからという理由だけで続けていると、利益を生む仕事へ使う時間が削られる。
ここでは感情を否定するのではなく、その関係が今後も双方に価値を残すかを見る。
仕事は、続けるかやめるかの二択ではない。経営者が担う仕事、ほかへ任せる作業、回数や範囲を減らす業務、役割を終える仕事に分けられる。
仕事を残す・任せる・減らす・終えるに分けると、責任を投げ出さずに見直しやすくなる。
たとえば、重要な顧客との面談は自分が担い、日程調整や案内は別の方法へ変えられる。商品そのものは続けながら、細かな個別対応を減らす選択もある。発信をやめるのではなく、媒体や頻度を絞る方法も考えられる。
仕事を減らすとは、すべてを捨てる話ではない。価値を生む部分へ時間を集中させる判断である。
何をするかを考える前に、何をしないかを決める。新しい商品や集客方法を加えても、利益の薄い仕事を抱えたままなら、経営者の予定はさらに増える。
枝を切った木が幹へ養分を集めるように、不要な仕事を外すことで、残す仕事の質を高められる。
50代以降の経営では、今月の売上だけでなく、数年後の自分を支える仕事かどうかも重要になる。信用、顧客との関係、商品、記事、経験、自由に使える時間として残るかを見る。
人生後半へ残る仕事を優先するという判断が、経営者の仕事の優先順位を変えていく。
三つに絞る仕事は、単に急いでいる三件ではない。利益を生み、顧客へ価値を届け、信用や将来の資産につながる仕事である。その基準が見えれば、何を外すかも判断しやすくなる。
次に必要なのは、選んだ仕事へ経営者の時間をどう配分するかを考えることである。

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三つに絞り経営者の時間を取り戻す

経営者の時間は、空いた時に生まれるものではない。三つ以外の仕事を止めて初めて戻ってくる。その余白は、利益と会社の未来を描き直すための、まだ白い地図になる。

三つに絞る目的は、予定を空けることではない。経営者の時間を、利益、顧客、商品、会社の未来を考える場所へ配分し直すことにある。この章では、人生後半に何を残すかという基準から、仕事の選び方と経営者自身の役割を、今後の方向とともに具体的に見直す。

経営者の予定は、放っておけば自然に減るものではない。顧客からの依頼、取引先との連絡、確認、修正、請求、新しい企画が次々に入り、空いていた時間まで埋まっていく。
すべての仕事が終わった後で会社の未来を考えようとしても、その時間はなかなか生まれない。だからこそ、経営者の時間は先に確保しなければ残らない
経営者の時間とは、予定表に生じた空白ではなく、会社の方向、利益、顧客、商品を考えるために配分する経営資源である。
作業の後に残った時間を使うのではなく、重要な判断へ使う時間を先に決め、その中へ仕事を収める必要がある。
一日の仕事を三つに絞る時、急ぎの順番だけで選ぶと、経営者にしかできない仕事は再び後へ送られる。問い合わせへの返事や納品への対応は急いで見える。一方、価格の見直し、商品の終了、顧客の選別、利益の確認は、今日行わなくても表面上は困らない。
そのため、会社の未来を変える判断ほど先送りされやすい。
経営者の仕事の優先順位は、急いでいるかではなく何を残すかで決める。適正な利益を生むか。顧客へ高い価値を届けるか。会社の強みを育てるか。信用、商品、文章、仕組みとして数年後にも使えるか。
こうした基準から三つを選ばなければ、目の前の要求だけで一日が終わってしまう。
三つを選ぶという行為には、三つ以外を同じ日に抱えないという判断も含まれる。新しい仕事を加えながら、これまでの予定をすべて残せば、経営者の負担は増えるばかりだ。
何をするかは何をしないかと対になっている。後へ送る、任せる、範囲を狭める、役割を終えるという選択があって、初めて重要な仕事へ時間を使える。
仕事を減らすと、会社の勢いまで失うように感じる人もいる。だが、数を減らすことと、価値を減らすことは同じではない。利益の薄い仕事や、経営者が担う必要のない作業を外せば、商品、顧客、判断へ使える時間が増える。
減らすのは仕事の価値ではなく力の分散である
氣の経営では、予定だけを切り離して見ない。経営者の疲労、場の空気、顧客との会話、お金の残り方、家族との時間は互いに影響する。予定が多すぎれば、返事を急ぎ、説明が不足し、顧客との小さな行き違いも増えやすい。
判断する余裕がなくなれば、利益の薄い依頼まで受けてしまう。経営者の状態は仕事の選び方へ表れるのである。
だから、仕事を三つに絞る判断では、売上だけでなく、自分の状態も確認したい。その仕事を続けた時に、判断力や対人関係まで損なわれないか。利益が残り、顧客にも価値が残り、自分も数年続けられるか。
経営者・顧客・利益の三者に価値が残る仕事を優先することが、人生後半の経営には欠かせない。
一日に三つを選ぶのは、処理能力を試すためではない。経営者の位置を、細かな作業の中心から、会社の未来を決める場所へ移すためである。
三つを選ぶことは経営者の役割を選び直すことだ。

経営者が思考時間を確保し人生後半の未来に希望を見いだす場面

仕事を減らして生まれた時間を、すぐ別の作業で埋めてしまえば、経営は以前と変わらない。三つに絞る本当の目的は、予定表に空白をつくることではなく、利益と会社の未来を考える時間を持つことにある。
生まれた時間を思考へ使って初めて仕事は三つに絞られる
考える時間には、派手な成果が見えにくい。売上表を眺め、なぜ利益が残らないのかを考える。顧客の反応を振り返り、選ばれている理由を探す。続けている商品が、今の市場や自分の体力に合っているかを問い直す。
こうした時間は、すぐに請求書へ変わらなくても、半年後や数年後の経営を左右する。
極論すれば、「遊んでいても利益が出ればそれでいい」ということだ。これは、何もせずに収入を得ればよいという意味ではない。経営の目的を、忙しく動く姿から、価値と利益が残る仕組みへ移すという意味である。
経営者が何時間働いたかより、顧客へ何を渡し、その仕事から何が残ったかを見る。作業量ではなく残った価値が経営の成果である
経営者が考える時間を持てれば、同じ説明を繰り返しているなら文章にできないか、個別対応が多いなら提供範囲を明確にできないか、依頼が偏っているなら商品構成を変えられないかという問いが生まれる。
日々の仕事から得た経験を、記事、商品、手順、判断基準へ変えれば、過去の仕事が次の価値を生みやすくなる。
仕事を経験のままで終わらせず資産へ変えることが、人生後半の経営を支える。若い頃と同じ量を働き続けなくても、これまで積み上げた知識、信用、顧客との関係を生かせる形をつくればよい。
自分が毎回最初から動かなくても、文章や商品が顧客の理解を助け、紹介や再依頼へつながる状態を目指せる。
50代以降は、働ける時間を無限にあるものとして考えない方がいい。体力や気力だけでなく、家族との時間、自分の健康、これから経験したいことにも価値がある。
会社のために人生を使い切るのではなく、会社から利益、信用、誇り、自由に使える時間を受け取る必要がある。人生後半では仕事量より受け取れるものを見る
残したい仕事は、人によって違う。長く付き合いたい顧客との仕事を選ぶ人もいれば、専門知識を商品や教材へ変えたい人もいる。店舗を小さく続けたい人も、後継者へ渡したい人もいる。
大切なのは、他社の成長方法を追うのではなく、自分の時間、強み、生活に合う経営を選ぶことだ。
経営者の仕事を三つに絞る基準は、今日の売上だけでは決まらない。利益を生むか、顧客へ価値を渡せるか、信用や商品として将来へ残るか、自分が担う意味があるかを見る。
三つの仕事は会社と人生の両方を支えるものから選ぶ必要がある。
三つへ絞ったからといって、急にすべての問題が消えるわけではない。予定外の依頼や、断りにくい関係も残る。それでも、優先する仕事が明確になれば、何を受け、何を外すかを判断しやすくなる。
選ばない仕事を決めてこそ重要な仕事を守れる
忙しく動くことで会社を支えてきた経験は、無駄ではない。その経験があるから、顧客が求めるものも、現場で起きる問題も分かる。
これからは、その経験を作業の量へ使うだけでなく、利益、商品、信用、時間へ変えていく。経営者の思考時間が使って減らぬ金百両を育てるのである。

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読者からのよくある質問とその答え

Q.経営者は一日にどの仕事を優先すべきですか。
A.経営者の仕事の優先順位は、急ぎではなく、利益と信用を残すかで決める。目の前の依頼だけを追うと、気持ちは落ち着いても、考える時間が消えやすい。まず今日の予定を見渡し、経営者にしかできない判断へ時間を先に配り、他の作業は思い切って後へ回す。

Q.仕事を三つに絞ると会社が回らなくなりませんか。
A.仕事を三つに絞っても、会社に必要な仕事まで捨てるわけではない。残す、任せる、減らす、終えるに分ければ、責任を投げ出さずに力の配分を変えられる。まず今の仕事を全部書き出し、利益と信用、将来性が残るものから落ち着いて順番を見ながら丁寧に選ぶ。

Q.仕事を減らすと売上まで下がりませんか。
A.仕事を減らすと売上が下がる場合はあるが、利益まで下がるとは限らない。採算の低い依頼が、価値の高い仕事へ使う時間と気力を奪っている場合もある。まず売上額だけでなく、作業時間、修正回数、顧客対応まで含めて、実際に何が残るのかを丁寧に確かめる。

Q.経営者は思考時間をどう確保すればよいですか。
A.経営者の思考時間は、仕事が終わった後に取ろうとしても残りにくい。細かな作業を優先すると、会社の未来を決める判断がいつも後回しになる。まず予定表へ考える時間を先に置き、商品、顧客、利益のどれを見直すか決めて、気持ちと判断の余白をしっかり守る。

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1.今日の仕事を書き出す
今日予定している仕事を、細かな連絡や確認まで含めて紙に書き出す。頭の中だけで考えず、時間がどこへ流れているかを見える形にする。急ぎに見える仕事と、経営者にしかできない判断を分けて眺める。
2.残す基準を当てる
書き出した仕事を、利益、信用、将来性、自分が担う意味で見直す。売上があるだけで残さず、その仕事の後に何が残るかまで確かめる。価値が薄い仕事には、任せる、減らす、終えるの印を付ける。
3.三つ以外を外す
今日優先する仕事を三つだけ選び、それ以外は後へ送るか担当を変える。顧客への連絡が必要なら、断るのではなく対応する時期を明確に伝える。生まれた時間は、新しい作業で埋めず、利益や商品の判断に使う。

『経営者の価値は、抱えた仕事の数では決まらない。利益と信用を残す三つへ力を集めた時、思考する時間が生まれ、その余白が会社と人生後半の未来を確かに育てていく。』

(内田 游雲)

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