金を手に入れる為のコストについて理解しているか

profile：内田游雲（うちだ ゆううん）
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。静岡県静岡市に生まれる。小規模事業や個人事業等の小さな会社のコンサルティングを専門に行い、30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的コンサルティングには定評がある。本サイトの「運の研究－洩天機－」は、運をテーマにしている。他にも、この世界の法則や社会の仕組みを理解し経営を考える「気の経営」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営（メルマガ編）】も発行中（無料）

金というのは、ただ何かを買ったりするだけではない。金を手に入れるためには、何かと引き換えにして手に入れなければならないものだ。つまり、金を手に入れるためには、コストがかかるということである。

金を手に入れるために交換するものとして、私たちが真っ先に思い浮かべるのが「時間」だ。時間は、ほとんどの労働について基本的な交換単位となっていいる。金がもっと欲しければ、そのために費やす時間を増やすのが普通である。

そして、私たちはこれまでずっと、もっともっと金が欲しいと思ってきた。

しかし、ある調査では、

「あなたにとって一番大切なものは何ですか？」

という質問に対して、67％が「自由な時間」と答えている。一方で金を一番にあげた人は、13％しかいなかった。私たちは時間が大切だと知っている。しかし、実際にやっていることを見れば、金を手に入れるために時間を消費して働くだけで、自由な時間を大切にしているとは、とても思えないのだ。

私たちは、金があればもっと多くの時間を買い戻せると信じて、金を時間を引き換えにしている。しかし、その重要な時間の交換レートというのは、大抵の場合、雇用側の一方的な提案に従うだけしか無い。そして、大事な時間はどんどん足りなくなっていくことになる。

時間以外にも、金を手に入れるために引き換えにしているものがある。

まず、「自由」だ。

金を手に入れたい目的の一つに、自由を手に入れたいということがある。しかし、この自由を手に入れるために、長い期間、働きづめの日々を送ったりする。労働時間を増やすということは、単に時間を失くしているだけではない。自由の象徴である金を手に入れようとして、かえって自由を失っている。

そして、「健康」だ。

日本では、以前、過労死という言葉が新聞を賑わしていた。これは、健康と金を引き換えにすることの極端な例かもしれないが、現実に過労は身近なところで影響を与えている。

心の病の増加、特に不安やうつなどは、仕事と金から生まれるストレスが、大きな要因となっている。私たちは、金を手に入れるために、精神的にも肉体的にも傷ついてしまっている。

まだまだある。

金は、「人間関係」にも影響を及ぼす。

夫婦や親子、親族の間でも、金は最も一般的ないざこざの原因である。離婚原因の多くが、金に原因がある。人間の幸福感と最も関係が深いのが、結婚生活だといわれている。
その次が、家族や友人などとの人間関係、充実した生活、運動、精神の充実、といったことだ。

しかし、金を多く稼ごう、金を手に入れようとすれば、結婚生活は真っ先に犠牲にされる。それどころか、幸福に関係の深いものは、すべて金銭的な富を得る為に犠牲になる場合が多いのである。

金を通じて幸福を得ようとすれば、かえって幸福を遠ざけ、代わりに、怖れや妬み、欲望、そして恥ずかしさが生まれるというジレンマがあるのだ。

金を手に入れるためになぜ、人生にとって最も大切なものを、売り払うようなことになるのだろうか？

じつは、金には２つの面がある。

一つは、単純な算数の面、つまり、足し算と引き算だ。

持っているものを使う。
稼いだものを貯蓄する。

こうした単純な面である。

もう一つは、潜在意識の内に積み重なった、金に対する意識や感情の面だ。

「金」に対する感情、意識とは、心の底に刻み付けられたものだ。この潜在意識によって「金」に対する行動が規制され変わっていく。

そして、誰もが「金」に対して2つの力を働かせている。「引き寄せる力」と「引き離す力」だ。物理でいう引力と斥力のようなものだ。そして、このそれぞれに、金の２つの面が作用している。

人生を生きていく上で、絶対的に「金」は必要だ。その金を手に入れるためには、この、金の持つ２つの面、つまり「金」に対して及ぼす２つの力について、私たちは、しっかりと理解しておく必要があるのだ。