日本人のDNAに深く刻まれた「ご恩と奉公」

自分の生きがいとして仕事をする時代

世の中は、振り子のようにある極まで動くと、その反対に戻り始める法則がある。現代の資本主義は、グローバル資本主義へと変遷しその極へと向かっている。もうしばらくしたら、徐々に反対方向へと振り子がゆり動いていくだろう。お金中心主義から、人間中心主義に振り子が移っていくことになる。時間を切り売りする世界から、自分の為に仕事をし自分の生きがいとして仕事をする。そんな時代が、これから出現してくるのだ。(内田游雲)

滅私奉公がお金を遠ざけてしまう

私たちは、残念なことに、自分の為に仕事をするのではなく、所属する集団の為に働くべきだという価値観をどこかに持ってしまっている。滅私奉公という言葉があるように、自分の為に仕事をして、生きがいを仕事になんかできっこないと思い込んでしまっているのだ。

なぜこのようなことになってしまっているのだろうか?

日本人の仕事に対する感覚を語る上で忘れてはいけないものは、私たち日本人のDNAに組み込まれている価値観がある。それは、全体のために頑張るという価値観だ。つまり、会社のためには、個人の考えや価値観は犠牲にすべきだという考え方である。

この考え方の原型は鎌倉時代あたりまで遡ることになる。これを読んでいるあなたも、「ご恩と奉公」という言葉を学校の歴史で習って覚えているだろう。「ご恩と奉公」とは、鎌倉時代の幕府と御家人の関係を表した言葉だ。これは、戦国時代には仕える主君との関係になり、江戸時代には、藩と武士の関係になっていった。

つまり、自分が仕える主人(会社)が出世(成功)すれば自分も引き上げてもらえるという価値観である。

奉公しても捨てられてしまう現代社会

この価値観は、世の中が混乱しているときに、より大きな力を発揮する。敗戦後の日本は、混乱を極めていたから、このDNAに刻み込まれた考え方は、非常に効果的に会社を大きくしていく原動力になった。

日本の会社が持っていた「終身雇用制度」は、この「ご恩と奉公」の典型的な制度だったのだ。

ところが、社会が成熟し安定してしまった現在は、会社と社員の関係が「ご恩と奉公」ではなく、資本主義経済の「雇用関係」となってしまった。

だから、「滅私奉公」しても、ある日突然に首を切られるかもしれない。会社側も利益を求めて効率を第一に考えているから、人件費を少しでも下げる為にリストラをする。

こうして、これまで日本の経済を支えていた基本的な価値観である「会社中心主義」が崩れ、現在の混沌とした日本経済になってしまっているのだ。

資本主義からグローバル資本主義に

じつは、日本の経済システムは世界的にみてかなり特異で、「会社中心主義」というのは資本主義においては、本来ありえない姿である。たとえば、資本主義の中心であるアメリカでは、個人の価値観ややりがいを元にビジネスを創造するというのは至極当たり前の世界である。

しかし、この資本主義にも大きな問題が隠れていた。

資本主義とは、資本が中心にあるという考え方だ。つまり、世の中で一番大事なものは、資本であるということだ。こうなると、会社の目的は、資本、つまり利益を最大にすることを目指すことになる。また、会社で一番偉いのは社長ではなくて資本家(株主)ということになる。

これを発展させると、現在のグローバル資本主義、つまりお金も人も物も国境がなく自由に行きかうべきだということになっていく。その結果どうなるかというと、労働者の収入が減り、資本家(投資家)の収入が増え、格差社会となっていく。

「はたらけど
 はたらけど猶わが生活楽にならざり
 ぢっと手を見る」

これが、グローバル資本主義の向かう先なのだ。

実質賃金が下がり続ける社会の仕組み

グローバル資本主義においては、グローバリストが自己利益の最大化を求める世界だ。経済がデフレ化し、失業率が高まった時期には、財政による雇用創出に反対し、

「雇用は常に完全雇用」
「雇用対策を打ってはならない」
「必要なのは雇用の流動化であり非正規雇用を増やす」

と、失業率が高い時期に「失業率を高める」政策を主張し、国民の所得水準を引き下げていく。逆に、経済が人手不足状態になり、失業率が下がってきたら、

「人手不足解消のためには移民を入れなければならない」

そうやって労働者同士の競争を激化させ、国民の所得水準を引き下げる政策を主張する。

いずれにせよ、国民のほとんどの人の実質賃金は下がり、企業の人件費が圧縮され、企業の利益が拡大し、その利益から「配当金」が支払われ、グローバル株主の自己利益最大化が達成されることになる。

グローバル資本主義の世界は、「人々の実質賃金を引き下げる」方向に常に動こうとする。

なぜならば、

「そうしなければ、我々(グローバリスト)の自己利益最大化が達成されない!」

という話だからだ。

これでは、日本型会社主義が機能しなくなるのは当然で、これまで社長(主)と社員の主従関係が中心でよかった会社が、社長と株主の関係が中心になっていく。

だからそこに、「ご恩と奉公」といった価値観が入る余地はなく、社員は単なる労働者というパーツになってしまうのだ。少しでも人件費の安い人を雇うほうが効率的であり、そのほうが利益が大きくなるから正しいとなる。

これが、非正規雇用が増え、外国人労働者が増え続ける日本の姿だ。しかしアメリカのような知的アイディア中心の経済においては、この資本中心主義は、かえって利点になる。(資本が集めやすいし、知的財産権が強く保護されているから)

しかし、日本のような職人中心的な“ものづくり”型経済では、会社への忠誠心が下がり、技術の流出につながっていく。

それでも、資本主義の中心であるアメリカにおいても、最近、この資本を中心にするということに疑問をもたれてきた。リーマンショックを皮切りに、人間性をスポイルして、お金を中心にすることに疑問を持つ人たちが多く出現し始めたのだ。

振り子の揺り戻しが始まりつつある

世の中は、振り子のようにある極まで動くと、その反対に戻り始める法則がある。いま、資本主義は、グローバル資本主義へと変遷し、その極へと向かっている。もうしばらくしたら、徐々に反対方向へと振り子がゆり動いていくだろう。お金中心主義から、人間中心主義に振り子が移っていくことになる。

これまでのような資本中心的社会は終焉を向かえ、新しい人間の幸福度を中心にする社会に移り始める。もちろん、それはゆっくりで、まだ感じられないかもしれないが確実にその方向が出現してくるだろう。

そして、

「生きがいを仕事にする」

これが、これからのお金の稼ぎ方の中心になっていく。

「好きなこと」だから、時間を忘れて没頭できる。
「やりがいを感じている」から楽しく生き生きと仕事ができる。

これこそが、人間が本来生きていくべき姿だ。時間を切り売りする世界から、自分の為に仕事をし自分の生きがいとして仕事をする。

そんな時代が、これから出現してくるのだ。

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