お金の歴史を知ることでお金が理解できる

金とは何かということを究明しようとすると、まず、金の歴史について知っておく必要がある。金の歴史は、金の実態が消失し現実感を失う歴史でもある。金の現実感がなくなるほど、私たちの金にたいする考えも、大きく変化していく。この金の抽象化ということが、金の現実感を失わせ、個人の大きな経済問題としてクローズアップされることになるのである。(内田游雲)

profile:内田游雲(うちだ ゆううん)
ビジネスコンサルタント、経営思想家、占術家。中小企業や個人事業等の小さな会社のコンサルティングを中心に行う。30年以上の会社経営と占術研究による経験に裏打ちされた実践的コンサルティングには定評がある。本サイトの「洩天機-運の研究」は運をテーマにしている。他にも、この世界の法則や社会の仕組みを理解し経営を考える「気の経営」を運営している。座右の銘は 、「木鶏」「千思万考」。世界の動きや変化を先取りする情報を提供する【気の経営(メルマガ編)】も発行中(無料)

金の歴史的な始まりについて

誰もが生きていく上で、必ず勉強して欲しい項目に、金の知識(マネーリテラシー)がある。金の知識は、人生の必須科目だと言っていいものだ。しかし、現実には、金についての知識を学ぼうとする人は極めて少数である。

金とは何かということを究明しようとすると、まず金の歴史について知っておく必要がある。そこでここでは、金の歴史について、まず、その概略だけでも説明することにする。

金の歴史を遡ってみれば、経済活動の最も古い形式は、物々交換と呼ばれるシステムだったとされる。これはまず、同じ価値を持つ品物同士を交換する取引である。たとえば、家畜と穀物は、誰もが必要としていたし、もう少し特別な価値を持つ、そのほかの品物と簡単に交換できる為に、「最も初期の金」として塩が用いられたとされている。

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英語で給料のことを「サラリー」という。塩は「ソルト」だ。これらはどちらもラテン語で塩という意味の「サラリウム」が、語源となっている。これは、決して偶然になったわけではない。ローマ時代に兵士達は、塩で給料を支給されていたのだ。

この時代の経済は、牛や小麦、そして塩などの実際の生活に欠かせないものだけが流通していた。こうした物々交換は、とても効率的なシステムだが、ちょうどそのときに双方が相手の持っているものを欲しがっていないと成立しない。

牛一頭を穀物一袋と数本の槍と交換するのが、現実的とは限らないし、牛一頭、穀物一袋、槍一本の実際の価値を決める、はっきりした基準が無い為に簡単にはいかないのだ。

そこで、次第に「一次産品」という考え方が生まれた。

金の歴史に見る金のカタチの変遷

一次産品とは取引可能な生産品で、それ自体に有用性のあるものを指す。具体的には、金属などだ。道具や武器のように必要不可欠な品物に加工でき、将来ふたたび取引に使えるものである。当初は、これが取引の道具として、使われていた。

そして、次に登場したのが「代表貨幣」だ。

「代表貨幣」とは実質的な価値が無いものを価値の象徴として用いたものである。これが、「金の抽象化」が始まったお金の歴史的な一歩だった。

金の歴史が進むほど金は抽象化する

しかし、11世紀末、中国の宋で最初の紙幣が登場したときに、金の抽象化は格段に進むことになる。紙で金を作るという紙幣は、材料としての利用価値の無い、純粋な意味での代表貨幣となる。

さて、時代は進み、18世紀の始めに、スコットランドの経済学者ジョン・ローが、政府は所有する「Gold」以上の紙幣を発行できるという考えを提唱した。それまでは、紙幣はあくまでも所有する「Gold」の額のみしか発行できないという考えが主流だった(これが金本位制だ)。

ところが、彼は「Gold」よりもむしろ政府が所有する土地を担保に、紙幣の将来の価値を保証しようと考えたのだ。これが、現代の銀行システムの先駆けとして、赤字に苦しんでいたフランスを支払い能力のある国家に生まれ変わらせ、有名なミシシッピバブルを引き起こすことになる。

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しかし、それでも紙幣は、抽象的ではあったものの、それでも価値のある物質的なもの(たとえばGold)に結び付けられていた。

ところが、アメリカが1971年にドルと「Gold」の引き換えを停止して「金本位制」を廃止すると、わずかながら残っていた金の具体性は、全くなくなってしまった。紙幣は物質的な現実性から全く独立したものになったのである。

通貨としての金から、「Gold」に裏打ちされた紙幣、そして単独で成り立つ紙幣へと、金はどんどん抽象化していく。つまり、実態が無くなっていったのだ。

金の歴史は金の実態が消失する歴史

それからさらに数十年後の今、クレジットカードやデビットカード、インターネットバンキング、電子マネーなどといったように、金のデジタル化によって金は現実性をますます無くしていくことになる。

試しに、考えてみて欲しいのだが、あなたの年収のどれくらいの金額の金を実際に一年間に目で見るだろうか。恐らく30%もないのではないだろうか。

給与は振込み、電気代などの光熱費は引き落とし、電車に乗るのにはSUICAなどの電子マネー。つまり、収入があっても、実際に金を目にする機会は、ほとんど無くなっている。現代の金はデジタル情報として存在し、完全に実体の無いものに大きく変化している。

これが、金の辿ってきた歴史だ。

そして、金の現実感がなくなるほど、私たちの金にたいする考えも、大きく変化してきている。この金の抽象化ということが、金の現実感を失わせ、個人の大きな経済問題としてクローズアップされることになるのである。

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